美形なら、どんなクズカスでも許されるの?〜いや、本当ムリだから!調子乗んなって話だよ!!〜
これは、結が中学校に入学する少し前の話である。

結の婚約者も決まったばかりではあるが。


小学校も卒業して、ちょうど今は中学校入学を控えた春休み中だ。

だから、丁度いい機会だし、こういうのは早いうちがいいという理由で、つい最近顔合わせとして、お偉いさんも御用達の某高級料亭にて結は婚約者を紹介されたのだ。

そりゃ、両親に結の婚約者が決まったという話を聞かされた時には、結は当然ビックリしたし
両親の話を聞けば聞くほど、自分の婚約者はパーフェクトな御曹司だと耳にタコができるくらい聞かされた。

そんな素晴らしい人が、自分なんかの婚約者でいいのかって不安と申し訳無さと…やっぱり期待とで色んな感情が混ざりぐちゃぐちゃだ。

だけど、結だって恋や結婚に夢見る女の子だ。

やっぱり浮かれちゃって興奮してしまう。

浮かれ興奮して、相手の人イケメンって聞いてるけど本当かな?どんな人だろう?
自分が婚約者でいいのかな?私が婚約者でガッカリしないかな?という期待と不安な気持ちが交互にやってきて忙しない。


ドキドキドキドキ!!


会ってもないのに緊張する毎日。

期待と不安で、眠れない日々。

そして、縁談の話があって一週間もしない内に顔合わせする事となったのだ。


そりゃ、緊張し過ぎて眠れなかったし、婚約者の話があってから今までにないくらいスキンケアに時間をかけ

顔合わせ当日。時間をかけ気合いたっぷりに、結はとびっきりのオシャレをした。


どんな人だろう?

いい人だといいなぁ。

私を見てガッカリしなきゃいいけど…


なんて、頭の中で相手の事をいっぱいいっぱい考えていたし

心臓が飛び出るんじゃないかってくらいドキドキし過ぎちゃって。どうやってここまで来たのか、親や周りの大人達とどんな会話をしたかなんてまるで覚えてないほどに緊張してる。

だって、いつ料亭の席に座ったのかも覚えてないし何だったら頭が真っ白だ。

それに、“本当にカッコいい子でね!結ちゃんをビックリさせたいから実際に会うまでのお楽しみ!”と、両親はサプライズになるねなんて、楽しそうに言って婚約者の写真すら見せてくれなかった。

きっと、結が喜んでくれると確信し、今からウキウキ、ソワソワしているのだろう。

期待の眼差しで結をチラチラ見る両親に、結は相手の顔も知らないので緊張が倍増しになっていた。

相手の家柄は結の家柄にふさわしいくらい由緒正しいお家柄で申し分なく。相手は幼い頃から英才教育で育ち文武両道、品行方正のイケメンだという。言う事がない程の完璧男子と両親から聞いている。

ただ、疑問なのが

そんな完璧男子が、なぜ家柄しか取り柄のない自分と婚約者になってもいいと思ったのかだ。…おそらく、政略的な大人の事情が絡んでいるんだろうが。

…まあ、それはさて置きだ。

ドキドキしながら相手方を待っていると、相手の両親の後ろに続いて歩いてくる少年の姿が目に入った。

少年の歩く姿は洗練されていて、歩いてるだけで華があった。洗練された歩き姿に思わず、結はポへ〜と少年に見惚れてしまっていた。

少年は席に着く際のマナーも完璧で、元々マナーなど得意でなかったが緊張のせいもあって何もかもがグダグダだった結とは大違いであった。

そして、いつの間にか始まってしまった挨拶。


「はじめまして。九条 蓮(くじょう れん)です。年は、結さんと同い年の12才です。今日は、この様な立派な席を設けていただきありがとうございます。」

と、優しそうな笑みを浮かべながら、しっかりした挨拶をしてきた。それに比べ、結は緊張のあまりパニックになり

「…ヒャッ、ひゃじめまして!!結って言います。格闘技大好きです!だぁ〜いしゅきでしっ!よろしくお願いしまっす!!」

と、何故か勢いよく立ち上がり、ガタンと椅子は倒すわ、頭を下げる時勢い余ってテーブルに頭をぶつけお茶をひっくり返すわで、周りも大慌てのてんやわんやな恥ずかしいだけの残念な挨拶になってしまった。


ガガァァーーーーーンッッッ!!!!??


自分でも、何やってるんだぁ〜!

最悪だぁぁ〜〜!こんなハズじゃなかったのにぃぃ〜〜!

家で、何回も何回も練習したのに!家を出発する直前までいっぱい練習したのに、全部水の泡だァァァッッ!!!

それに、格闘技ってなによ!格闘技の話なんて挨拶に全然組み込まれてなかったのに!!

と、結は…恥ずかしさのあまり居た堪れなく俯いてしまった。

…バクバクバク!

冷たく打ちつける心臓の音が全身に響くように聞こえる。

聞けば、結の婚約者である蓮はこの春から結と同じ、私立星彩中学校に入学するという。
年も同い年だから学校でたくさん会う事になるだろう。下手すると、クラスが同じ可能性も大いにあり得る。

婚約者と一緒に中学校通うだなんて、
どんな顔して蓮に顔を合わせればいいのかとか、どんな風な態度を取っていいやら…浮かれてしまってヘマしそう!

…なんて、結の頭はまだ始まってもない婚約者との学校生活に夢を馳せていた。

ドギマギドギマギ!

結の緊張をほぐそうと、蓮が気を回して差し支えない色んな話をしてくれたおかげもあって何とか結も落ち着きを取り戻し

そこで、ようやく自分の婚約者の姿をまともに見る事ができた。


…ドッキューーーーーン!!!


…え?…えぇぇ〜〜〜〜〜っっっ!!!?


まさかとは思っていたが…

こ、これほどのイケメンだとは…!

想像を遥かに超える程の美形だ。と、結は自分の婚約者のあまりの容姿の良さに、目玉が飛び出るかってくらいビビった。

なんなら、ゴシゴシと目を擦り二度見、三度凝らして見て、これは現実かと自分の目を疑ったくらいだ。

そんな結の反応に、結の両親はドヤ顔だ。してやったりと顔を二マリとさせている。だが、自分の事で精いっぱいの結は両親のそんな反応にも気が付けなかった。

結の婚約者である九条 蓮は

まだ、中学校入学を控えた身でありながら170センチ以上ありそうな高身長。おそらく、成長期なのでまだまだ伸びるであろう。手足も長く、顔も小さいモデル体型。

そして、ハーフなのかクオーターなのか分からないが、ピンクがかったブロンドヘアに青と緑が光の入り方で7色に変化する美しい目をしている。そのせいもあって少々日本人離れした顔立ちをしている。

物腰が柔らかく優しそうな顔立ちをしていて雰囲気も優男って感じがする。
つまるところ、ものすっっごいイケメンなのである。もう、絵本の中の白馬に乗った白タイツの似合う王子様の如くにカッコいい!!


そんな蓮に、結はものの見事にズキューーーン!!!と、ハートを射抜かれ一目惚れしたのであった。


か…カッコ良過ぎね?私の将来の旦那!!サイコー…


な〜んて、この時までは夢見る乙女だった結。


そして、ここは若い二人にという、お見合いや顔合わせにありがちなお決まりのイベントがあり

結と蓮は、料亭の東屋で二人きりになった。


ドキドキして、何を話したら分からない!と、パニック状態の結の前で、蓮はいきなり


「…っはぁぁぁ〜〜〜!かったりぃ〜〜〜!!」

と、言って、スーツのネクタイを緩めるとさっきまでの品行の良さは何処にいったのかというほど、面倒くさそうに姿勢を崩し座り直した。
気がつけば、周りには大人達の姿はなく結と蓮の二人きりだった。

それを確認して、蓮は気を緩めたのだろう。

その行動にビックリした結が、何事が起きたのかと蓮を見ていると


「…ブスが、ジロジロこっち見るなよ。気持ち悪りー。最悪ぅぅ〜〜。」


先程まで、物腰柔らかくニコニコしていた優しい婚約者は

結の事をまるで汚物でも見るかのように顰めっ面をし、バイ菌が近くに居るとばかりに結から距離を取り

結と隣合わせた方の体を、汚いとばかりにパンパンとほろっていた。


………え?


頭の情報が追いつかない。そんな結に、蓮は言った。


「…マぁ〜ジで最悪。家の格式が同等で、西園寺家の本家に恩があるって理由で、俺、家に売られたんだぜ?
三男だし、あんたと同い年だからいいだろうってさ。
しかも、本当なら俺さ。私立叡智学園中学校に入学するはずだったんだ。
なのに、婚約者(結)が星彩中学校行くからって無理矢理、進路変更させられた。
…マジで、最悪。星彩中学校って、めちゃくちゃレベル低い学校じゃん。あんた、スッゲー頭悪いんだな。見た目通り。」


…叡智学園中学校って、確か美形率がバカ高い学校だったよな。イケメン、美女が多いって噂の中学校。

よく、その学校から俳優や女優、アイドルとかモデルが輩出されてるって有名な所だったはず。

受かってたんだ。でも、この容姿だと納得するわ。
アイドルか俳優でも目指してたのかな?

それにしても、私の事頭悪いって……そうなんだけど!でも、言っていい事と悪い事あるだろ。なぁ〜んか、感じ悪すぎだろ、この人。

なーんて、考えてた結に


「…どう考えてもあり得ねー!この俺の相手が、こんなドブスだなんてさ!!しかも、バカなんだろ?全然女らしくねーしマジのブスだし、デブだし!ないわ〜。」


と、結の心を抉る攻撃が始まった。


…え?デブ?

私、太ってないよな?健康診断でも標準だって言われたし。

と、いう結の考えを見透かしたかの様に

「あ。俺、女は43キロ以上はデブって思ってるから。43キロ以上の女なんて、女って認めてねーから。
ねーわ!おまえ、マジのマジでねーわ!!」

と、ドン引きしたように結を見ながら言った。


……え?


「まだ、バカでも美人なら許せた。それなら、都合のいいオナホとして使ってやったのに。
なのに、こんなドブスが俺の婚約者とかあり得ねーだろ。何の役にも立たねークソ以下だろ。最悪もいい所だ!」


……は?


「トチってセフレの何人かを妊娠させちゃったのはいいけど、その中の一人が敵に回すと面倒な家らしくてさ。」


……せ…フレ…だと?

…妊娠…??

……は?

あ…あんた、年いくつだよ?

…いや、これは年齢が云々の問題じゃないよ!

あ、あんた、とんでもない【下半身ユルユル怪獣のドクズヤロー】じゃねーか!おいっ!!


「その事で父様も母様も、めちゃくちゃ怒りまくってんだよな〜。その事実を揉み消す為に、金と後始末が面倒で大変だってな。
そんな時に、タイミング良くお前との婚約の話がきてさ。お前と婚約する事で許してやるって言われたわけ。」


コイツもコイツだけど…親っ!!?

たくさんセフレいてもいいどころか、相手妊娠させても構わないって感じに聞こえてならないんだけど?

いやいや!セフレだけでもヤバイのに、妊娠させても揉み消すとか…想像もしたくないくらい残酷な気がする。

で、セフレや妊娠はいいが

敵に回したくない人のお嬢さんを妊娠させちゃって困ってる。だから、私の婚約者になる事でその不祥事をなかった事にしてやるって事か!?

コイツの両親の頭の中では、私がコイツと婚約者、更に結婚するとなれば、コイツの不祥事を上回る大きな利益をもたらす何かがあるって話だよな?

つまりは、ドス黒い大人の事情で私達は婚約させられようとしている訳だ。

…コイツの不祥事のせいで…。



「いいか、その悪い顔と頭で、よぉ〜く聞けよ!
俺は、お前と結婚するんじゃない。お前の家柄や金と婚約、結婚するんだ。
あと、家同士の行事や付き合いからは、どうしても逃れる事ができない。だから、その時だけは仲良しアピールしろよ。
それ以外の時は、俺に一切関わるな!俺とドブスは赤の他人!いいなっ!」


…はあ???

なに、そのクソみたいな主張!?
お前に、人の心はないんかいッッッ!!?

…今までの話聞いてる限りじゃ、コイツに人の心なんざ存在しないわ。

とんだ、悪魔じゃねーか!!!

…今すぐにでも、このドクズをブン殴って
『このドクズヤローがァァァッッ!婚約破棄じゃーーーー!!ボゲーーーーーッッ!!!』
って、言ってやりたい。

…だけど、無理言って格闘技習わせてもらってるし…あんなに喜んでるお父さんとお母さんの手前、簡単に婚約破棄したいなんて我が儘は言えない。

もしかしたら、婚約破棄をお願いしたら大好きな格闘技まで取り上げられそうで怖い。


「俺は、俺で好きにするから、お前は俺と関わりがある事を周りに悟られるなよ!
間違っても、学校とかで気軽に話しかけてくんな。あくまで、俺とお前は真っ赤な他人!いいな!分かったな、ドブス!!」

と、恐ろしい形相で捲し立てていたくせに、大人達が自分達を迎えに来た時には

「二人で話をしてみて、どうだったかな?これから上手くやっていけそうかな?」

なんて、大人達がにこやかに聞いてくると

「はい。結さんは、気さくな方でとても喋りやすくて二人の時間を楽しく過ごす事ができました。」

と、蓮は愛想よくコロッと態度を変えていた。嘘も方便。息を吸うようにつらつらと嘘を並べている。

そんな蓮を、結はあんぐり口を開けて見ていた。


…こ、コイツ…ッ!!?

結も大人達に感想を聞かれるが、

なんて言ったらいいのか…。
まさか、コイツは人の心を持たないロクでもないクズヤローです!なんて、言える訳もなく。
嘘をつくのが下手な結の言葉は、しどろもどろで…

大人達からの株は駄々下がり。

逆に、うわっ面のいい蓮は大人達からの株はグングン上がるばかりだ。


そんな結を蔑むように、クスッと笑い見た蓮の顔が悪魔のように見えゾッとしてしまった。

それに、こんな性悪が周りに評価されているのが納得いかなくて、悔しくて悔しくて!!!



そんな最低最悪の婚約者との初顔合わせがあり。



いよいよもって、憂鬱な入学式当日が来てしまった。

…学校行きたくない。

けど、ウキウキの両親を見ればあの婚約者の本性なんて話せないし、入学式に行きたくないなんて言える訳もなかった。

クラスは、成績や素行、部活の実績などによって順位づけされ決められるらしい。

天才クラスはA組、秀才クラスB組、普通クラスC組、、、F組は…落ちこぼれ組と分かりやすいように組み分けされる。

もちろん、結はF組。蓮はA組と離れてラッキーだったが、同じ中学校に通ってるってだけで最悪もいい所だし。

結は部活動に入ってなかった為、習い事の格闘技の実績も認められず、落ちこぼれ組のF組になってしまった事は正直凹む。


だが、入学式で結にとって物凄くスカッとした出来事があった。


某有名小学校出身の蓮は、6年間首席だったらしい話を聞いていた。もちろん、結と蓮の両親双方から聞かされたのだ。

だから、新入生代表の祝辞は当然、蓮がやるものだとばかり思っていた結。もちろん、結の両親もだ。

しかしだった!


新入生代表で呼ばれたのは、蓮の名前ではなかった。


「新入生代表、久遠 桔梗(くおん ききょう)」


驚いた!てっきり、蓮が代表として祭壇に上がるとばかり思っていたから。


しかも、新入生代表の桔梗は、この世とは思えない程の美貌の持ち主であった。

まだ声変わりのない透き通る様な美しい天使のような声。

黒曜石の様に真っ黒な肌はとても珍しいが、髪色もとても珍しかった。

全体的にパーマがかった腰ほどまでに長い髪は、根本は完全な黒ではなく夜空を思わせる深い藍色。

そこから徐々に夜が明ける様に紫がかっていき先に行けば朝の空を思わせるような透明がかった空色にグラデーションになっていた。
邪魔にならないようにだろう、その美しい髪をカンザシでピシッとポニーテールにしてまとめている。

目や眉毛やまつ毛まで、自然なグラデーションになっているので、新入生代表の久遠の美しさはより引き立っていて

やはり、この世の者でない美しさを放っている。

…美しい…

とにかく、美しいと言う他ない。

本当に人間かと疑いたくなる程までに美しい。

青色系全ての空(宙)を欲しいままに閉じ込めた様な幻想的な美しさがある。

まだまだ幼さの残る容姿はとても儚く、女神を思わせるような神秘的な美少女のように見えた。

だが、残念ながら桔梗は男子用の制服を着ている事から性別は男子だ。まだまだ、成長途中なので将来どんなイケメンになるのかとても気になる所だ。

桔梗の恐ろしい程までの美貌に、体育館中ザワつきはじめ桔梗の人知を超えた美しさに腰を抜かす人や失神する人まで出て一時騒然となった。

なので急遽、桔梗の代わりに第二候補の男子が祭壇に上がるも…


呼ばれたのは蓮ではなかった。


代表第二候補の男子は、東洋人特有の美を集結した様な美貌。

東洋人特有の白い肌に、艶々サラサラの黒髪と切長な黒曜の目。厳格で冷淡に見え、少し近寄りがたい雰囲気の超絶綺麗な美少年。

この少年もまたとんでもない美貌の為、やはり腰を抜かす者や失神者が多数出てしまった。

名前を【朱雀院 風雷(すざくいん ふうらい)】


これまた騒然となり、急遽、桔梗と風雷の二人は異例中の異例で、顔の大半を隠す特殊な大きなマスクを着用する事で対策をしたようだ。

そこで、一波乱あった祝辞も当初の予定通り桔梗が祝辞を述べ、何とか(?)無事に入学式は終わった。


ここで、結は思った。


なぁーーーーんだ!


自分程のイケメンはいないって威張り腐ってたくせに、ここに蓮が霞んで見えなくなる程の美貌が二人もいるじゃん!

品行方正で誰よりも優秀だと自慢してたくせに、新入生代表に選ばれもしなかったじゃん!

しかも、レベルの低い学校って馬鹿にしてたくせに!!

ザマーーーーミロッってんだ!

世間は、広いなぁ!

サイコーーー!!


なんだか、スカッとしちゃった!!


と、直ぐのちに、お友達になる桔梗と風雷に、めちゃくちゃ感謝していた。

…そう、直ぐのちに、まさかのお友達になるのだ。


そして、地獄しか見えなかった結の中学生活に、まさかまさかの面白楽しいドキドキ、ワクワクな希望が見えてきた。


その出会いは、ある人達との運命的な出会い。


結のクラスメイトで隣の席の宝来 ショウとの出会いだった。


隣の席のショウは、とっても内気で人見知りするような子。容姿はちょっとぽっちゃり気味、地味で平々凡々な容姿。
シャイな性格もあわさり、自分と同じく男とは縁がないだろうと結は勝手に親近感を持った。

つまり、失礼な話ではあるがショウも絶対にモテないと思ったのだ。

結は、似たもの同士。いいお友達になれそうだと声を掛けたのがキッカケで友達になったのだが…


しかーーーーし!!


ここで、大誤算が生じた。


一時間目終了のチャイムと同時に、何故か…

えげつないくらいの美貌三人と、平凡なぽっちゃり眼鏡女子がショウの所に集まったのだ。

そこで、あれよあれよという間に自己紹介が始まり


「…ん?ショウ、この人は?」

と、何故かショウにベッタリくっついている、久遠 桔梗。

…あれ?この人、入学式の時の新入生代表だ!!!
人間離れしたえげつない美貌と入学式の祝辞事件(?)で鮮明に記憶に残ってるよ!

美貌を隠す為に、顔の大半を隠す特殊なマスクをしていて美しいお顔をしっかり拝見できないのが残念だが。
雰囲気やあまりのスタイルの良さから、超絶美貌オーラは隠しきれてない。


…いや、しかし。今は、そんな事は問題ではない。

ショウと桔梗の距離感の問題である。

…え?いちいち、ショウの耳元に唇くっ付けるくらいまで近付けて話さなくて良くない?
ショウの事、耳の遠いおばあちゃんとでも思ってるんかいっ!?

…あれれぇ?いつの間にか、恋人繋ぎしてない?この二人…え?


「あのね、私とお友達になってくれた西園寺 結ちゃんだよ!」

と、キラキラ目を輝かせながら嬉しそうに桔梗達に結の紹介をしてくれるショウに、ちょっぴり罪悪感。

だって、純粋な気持ちで友達になろうとしてた訳じゃなくて、モテない同士分かり合えるかもという邪な気持ちで友達になろうと思った自分だったのに…。

こんなに純粋な気持ちを向けられると…うん、やっぱり…ちょい罪悪感。

…なんか、ごめんね。でも、邪だろうが、あなたと友達になりたいって気持ちは本当だからね?

すると、桔梗はすぐに反応して柔らかい笑みを浮かべ結に顔を向けてきた。

特殊にできた大きなマスクで桔梗の顔が隠れ、その美貌が見れないのが残念ではあるが桔梗の大人っぽい仕草や雰囲気に思わずドキドキしてしまう。

…顔を隠しても色んなところから美しさが滲み出ていて、どこをとってもとにかく美しいのだ。


「そう。ショウはぼんやりしてる所があるけど、とても優しい子なんだ。ショウの事、よろしくお願い、ね?」

と、桔梗はニッコリ笑ってるが…何故か圧が凄いのは気のせいだろうか?
この子に何かしたら、タダじゃおかねーぞと声に出さずともヒシヒシと伝わってくる恐ろしさがあり背筋が凍りそうなのも気のせいだと思いたい。

こんなに、物腰柔らかくて紳士的なのに。

ある意味もドキドキする。

「あと、俺の名前は久遠 桔梗(くおん ききょう)。
“ショウの婚約者”だよ、よろしくね。」


……んへ???

人の域を超えた美貌の持ち主が、ショウのこ、婚約者だとぉぉぉ〜〜〜!!!?

うっそぉぉ〜〜〜んっ!?

…あ、でも、アレだ!

ショウも、私と同じで

桔梗さんには大勢のセフレや恋人がいっぱいいるとか?セフレの妊娠問題とかドクズ問題が多発で親の手に負えなくなって、逃げ場がない状態まで追い込まれて仕方なくショウの婚約者にならざる得なかった的な?

そんな感じかも!

と、二人の関係性を勝手に決めつけた私は悪くないと思う。

それくらいに、何から何までかけ離れ結びつかない二人だったから。


「私は、桔梗と風雷の…あ、あと、ショウ(?)の幼なじみの常盤 フジ(ときわ ふじ)よ。私と話せるなんて光栄ね、あなた。」

この人、もんのすっっっごい美人だけど、かなり傲慢じゃない?

…初対面の相手にこんな挨拶とか凄くムカつくんだけど!

この傲慢美女が幼なじみとか…ショウ、すっごい意地悪されてそう。

…だって、自己紹介でショウの名前出す時、妙な間があったし少し嫌そうな顔してたから。

なーんか、フジさんは自分を中心に世界が回ってる。だから、どんな我が儘も許されるのよ!オーホホホ!!とか、思ってそう。

だって、逆ハーレムしてそうなエロエロな容姿してるもんなぁ。逆ハーで、ウハウハしてんだろうなぁ。くれぐれも、妊娠にはお気をつけてくだせぇ。

いくら、キラキラ眩しくて直視できないくらいの美少女でも、あんまり関わり合いたくない人だなぁ。

「俺は、桔梗の親友で、ショウとは友達の朱雀院 風雷(すざくいん ふうらい)。」

と、挨拶してきた少年も二人に負けず劣らずに綺麗で、桔梗と同じくその綺麗な顔の大部分を特殊なマスクで隠している。

冷たくて堅物っぽい雰囲気で、何だか近づきずらい。けど、…ん?ピアスとか、ゴツゴツしたアクセサリーをたくさん付けてるんだけど…優等生を装った不良でしょうか?

容姿がえげつないくらい綺麗なのは知ってるけど、雰囲気が冷たすぎて怖くて近づきたくない。

「私は、財前 陽毬(ざいぜん ひまり)と、申します。ショウと桔梗とは幼稚園からの友達ですぞ。良かったら、私とも友達になってもらえると光栄であります。」

と、独特の喋り方で挨拶してきた、ショウと桔梗の友達だという陽毬は丸い眼鏡をかけたかなりぽっちゃり体型の極々平凡な容姿の子だ。

ショウと同様に、とても大人しそうで…あと、容姿や性格からして全然モテなさそうだから話が合いそうだ。うん!いい友達になれるな!

なんて、友達を選ぶ基準がモテるかモテないかで判断する結は、結構性格が歪んでるのかもしれない。
それでも、自分がモテないから話の分かり合える友達がほしかった。

幼稚園や小学校の時の友達は、だいたいの子達が恋愛に興味深々で恋愛の話ばかりしてくる。
ちょい可愛いい子や、謎に自分に自信がある子達は恋愛に積極的で、すぐ男子との色恋沙汰に発展したりしかけたりで…色恋沙汰にさほど興味のなかった結とは気が合わなかった。

友達の恋愛話に興味無くても、全然恋愛の価値観が違い過ぎてついていけないなって思っていても友達を無くしたくなかったから無理矢理に何とか話を合わせていた。ストレスしかないし、めちゃくちゃに疲れる。正直、しんどかった。

恋愛の話は話でも、彼女達がしたい恋愛の話と、結の話したい恋愛の話では全然種類が違った。
だから、当時の友達と恋愛話をする時は苦痛でしょうがなかった。

なので、中学校に入ったら自分みたいにモテなさそうな平凡な子と友達になるんだって決めていたのだ。

みんなの自己紹介が済んだ所で休み時間終了のチャイムが鳴り、美貌の三人は自分達のクラスへ戻って行った。天才クラスのA組に…。陽毬は、少し離れた自分の席へと戻って行った。

だが、桔梗は自分の教室に戻りぎわ、ショウと離れがたそうにしていて

どうしてもクラスに戻らなきゃいけない事への踏ん切りに、一瞬ではあったが

ショウの体をグッと引き寄せ…美貌を隠す為の大きく特殊なマスクをクイっと下ろすと、チュッとショウの頭にキスをして

「…またね。大好きだよ。」

と、ショウの耳元で囁いて、サッとマスクを付け直すと名残惜しそうに教室を出て行ったのである。

あまりに自然で一瞬の出来事だった為、桔梗の行動を認識できた人は…まず、いなかったであろう。

それくらいに、一瞬の出来事だったのだ。


……え?

なに、それ。

羨ましすぎるんですが?


…あれ?

ショウと桔梗って、どんな関係性なの?

…え?めっちゃ、気になるんだけど!!


…ドキドキ!!


そして、隣のショウを見るとポッポ湯気が出そうなくらい真っ赤になって俯いちゃってる。

…か、かわいい。

恋する乙女は、どんな女子も可愛くなる魔法でも掛かってるんか!

なんか、ショウがこんな可愛く見えんなら、私も可愛くなれるんじゃないかって自信がつく!
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