美形なら、どんなクズカスでも許されるの?〜いや、本当ムリだから!調子乗んなって話だよ!!〜
険しい表情を浮かべたまま二人を見上げる風雷に
「…これって、桔梗君が魔道に失敗したって事なの?二人は大丈夫なの?」
二人を心配したフジが聞いてきた。
「陣に損傷もなく、上手く回っている所を見ると魔道は大成功している。」
と、見解する風雷の言葉に、ひとまずホッとする面々。しかし
「…だが…」
あまり思わしくない接続詞が、言葉の後に続きみんな心配する気持ちを抱えたまま風雷の言葉を待った。
「……これは、言っていいものか戸惑われるが。
二人の特に、桔梗の精神が崩壊する程までに【桔梗の過去世】はかなり悲惨で酷いものだと容易に予想できる。具体的な内容こそ分かる訳も無いが…。
もし、仮にだ。どちら或いは二人の精神が完全に崩れた場合、あそこにいる二人は木っ端微塵になり跡形もなく消えてしまう可能性が大きい。」
と、予測する風雷にみんな、ゾゾゾ…と身震いしてしまった。だって、時間が経てば経つほど二人のひび割れが酷くなっていくから。
「…ど、どうにかならばいのかい!?」
「そ、そうよ!風雷君は、世界でも数人しかいないS魔道士なんでしょ!?風雷君の力で、あの魔法陣を消して二人を助け出す事はできないの?」
二人の安否に不安を感じた結、フジは、風雷に何かの解決策を求めた。
「残念だが、俺よりレベルや力が弱ければ何とかなっていたかもしれないが。桔梗は、史上最強の魔道士。
この世界で桔梗に敵う魔道士なんて存在しないと言い切れる。だから、どうあがいても発動してしまった最強の陣を俺は解くことも止める事、邪魔する事すらできない。俺達にできるのは、二人の無事を祈るだけだ。」
とても絶望的な事を言ってきた。
結達は、それでも何とかできないのかと風雷に詰め寄ろうとしたのだが、元々白い風雷の肌は白を通り越して色を無くしているように見えた。
「…なんて馬鹿な事を…」
桔梗を見て険しい顔でギュッと握り拳を作り二人の行く末を見ていた。そして、何とかしたいのに何も出来ない策も思いつかない自分が不甲斐ないのだろう。悔しそうにギリギリと歯軋りをしている。
そんな桔梗を見てしまったら、みんな何も言えない。
みんな、黙ってどんどんひび割れの悪化していく二人を誰か助けてくれ!?と、強く祈りながら見ているしかない。
世界でも希少な存在のS級魔道士だという風雷でも桔梗達をどうにもできないと言ってるにも関わらず、頭では分かっていても風雷に縋るしかできず八つ当たりにも似たお願いしかできない。
何もしてられない自分達がとても無力に感じる。
そう感じてる間ににも、二人のひび割れは悪化していき桔梗に関しては大きく割れた部分から小さな破片がボロボロと崩れ下に落下する前にスゥー…と消えていった。
それを見て、二人がボロボロに崩れ落ちた時そのまま消えてしまうんだという風雷の言葉が事実である事が嫌でも分かってしまった。
……ゾゾォ〜〜…
みんなの脳裏に最悪の事態が過ぎった時だった。
「…こういうリスクがあるから、うちのショウの婚約者にしたくなかったんだ。…ったく!」
と、ため息混じりに呆れた声で話す若い男性の声がした。その声に、風雷は驚いたように目を大きく見開き声のする方を向いた。
風雷に釣られ、みんなもそちらを向くと
空中に浮いてる男女の姿があった。
普段なら驚きこれは現実に起きてる事なのかとビビり散らす一同であったが、今日は驚きの連続でしかも今現在非常事態となっており心がいっぱいいっぱい過ぎて、そこを突っ込む心の余裕はここにいる誰にもなかった。
男性の年のころは、高校生か大学生くらいだろうか?
ワイルド系イケメンで、身長は190cmはありそうな高身長に鍛え上げられた体。いかにも強そうで、彼の纏う雰囲気からは知性とカリスマ性を感じ只者ではない感じがヒシヒシと伝わってくるようだ。
男性の横には、ショウのお母さんらしき30代後半くらいの女性が立っている。何故、ショウのお母さんだと思ったかって?
容姿が何処からどう見てもほっそりさせ老けさせたショウなのだ。あまりに、ショウにそっくりなのでショウのお母さんなのでは?と、思っただけなのだが。
ただ、もちろんショウと違う部分も大きくある。
彼女は肌の色や髪の色が真っ白で、左右の目の色が違う。右目が金色、左目が虹色をしていて、黒髪、黒目、一般的な肌の色のショウとは全然違う。
「でもね!桔梗君ほどの完璧人間なんて何処にも居ないと思うよ?ショウちゃんを一番に守れる忠義心とか力なんて桔梗君には誰にも勝てないんじゃなかなぁ?」
「…………。」
「何より、もんのすっごーーーーーーく美人だし!本当、桔梗君に敵うくらいの美人なんて、どこ探しても居ないって思う!!そんな完璧男子が将来、私たちの息子になるって思ったら興奮しないっ!!?」
「……性格以外は完璧、な?だが、その性格が大問題だろ。人を判断する中で一番大切な所だろ?
…はあ…。お前も大概なイケメン好きだからな。」
「…ちょっと、引っかかる言い方してくるなぁ。
確かに私はイケメン大好きだよ?アイドルとか俳優さんとか大好きだし。
リー君だって、大の美人好きの女タラシじゃない!リー君の好みの女の子も知ってるんだからね!高身長で股下が85cm以上長いスタイル抜群のモデル体型のクール系美女!私と初めて会った日の事、まだ覚えてるんだからね!!
『あんたみたいなオバサンに絶対に惹かれる事はないので安心してくれ。容姿から何まで、俺の好みとはかけ離れてる。何よりオバサンだ。圏外もいい所だ。』
って、私を見て鼻で笑ってたもんね!」
「……ッッッ!!?今さら、大昔の事引っ張り出してこなくていいだろ?…だが、あの時は俺がどうにかしてた。猛省してる。」
何やら、喧嘩を始めた年齢からして親子っぽい男女は言い争いながらも、それぞれ
若いイケメンはショウの額に額を合わせ、平凡な容姿のオバサンは桔梗の手に触れている。口喧嘩しながら…
何をしているのか分からないが、さっきまでひび割れていつ壊れてもおかしくない状態だったショウと桔梗のひび割れが修復されていく。
「…あちゃ〜!修復しても新たな傷が出来るからキリがないね!」
と、全身白いオバサンが言うと
「桔梗のクソヤローはどうでもいいがショウが心配だ。面倒くせーが、俺は二人の精神に入って桔梗を完膚なきまでに叩きのめして連れ帰って来る。マナ、頼むぜ?」
ワイルドイケメンは、マナという白いオバサンに向かって笑い掛けると
「オッケー!いつでも大丈夫。ばっち、こーいって感じよ!」
と、ワイルドイケメンに向かってグットのサインをしてできもしないウインクで明るく合図していた。
「さすが、俺の奥さんだ。こんなとんでもない事、簡単にやっちまうんだもんな。ありがとな。」
そんな、ワイルドイケメンの奥さんだという白いオバサンに、ワイルドイケメンはスマートにキスしてオバサンをトキめかして、その様子を見てご満悦な表情を浮かべそこから表情を切り替えキリッと表情を引き締めるとショウの額に額をくっ付け目を瞑って人形のようにう動かなくなってしまった。
いきなりの事に頭が付いていかず、あっけらかんとその様子を見ていたみんなだったが
「…え…?だ、大丈夫なのか?アレ…。そもそも、あの二人は誰なんだ?」
と、疑問を漏らした結の声にみんなハッとし我に返った。
確かに、いきなり正体不明の男女が現れショウと桔梗に触れているのだ。しかも、オバサンの方は桔梗の創り出した魔道だけでないであろう陣全てに一瞬の内に何かを施したようだ。何をしたのかは分からないが。
若いワイルドイケメンはショウの額に額を合わせ動かなくなっってるし。
一体、何がどうなってるやらである。
「…今、かなり多忙な時だってのに。まさか、わざわざこんな所まで出向いてくるなんて…」
と、何やら二人の正体を知っている風な発言をした風雷は驚きその様子を見ていた。
「…え?風雷君、突然現れた二人の正体を知っているの?」
フジが、風雷にそんな質問をすると
「…あ、ああ。詳しくは言えないが、あの二人はショウのご両親だ。」
と、とんでも発言をしてきて、みんな顎が外れるかってくらい口をあんぐりさせて驚いている。
「……は???あのオバサンなら分かるけどさ。
宝来(ショウ)の両親って事は、あの高校生くらいの男も宝来(ショウ)の親って事になるよ?揶揄うのも大概にしてよね。今はふざけていい場合じゃないと思うんだけど。」
蓮は、どう考えてもショウの父親とは思えないワイルドイケメンについて突っ込んだ。
「…年は、かなり離れてるが正真正銘ショウのご両親であり、“今の桔梗”を抑える事の出来る数少ない人物達だ。」
“今の”という言葉に引っ掛かりは感じるものの、あの桔梗を抑え込める力を持つという事は相当な実力と力を持った人達である事には違いない。
しかし、それもそうと…
親子ほど年が離れてるし、あまり言いたくないが二人の容姿が不釣り合いにも程がある。
何故、この二人が結婚したのか…【政略結婚】という文字がみんなの頭の中に浮かび、特に蓮はそれに敏感でブルルっと身震いしてしまった。
ショウのお家は謎でいっぱいだが、一般家庭だというショウの家。だが、とてもお金持ちなのだという。
だから、ショウの身を案じた両親がセキュリティが万全で安全性に長けたお坊ちゃんお嬢様学校に通わせてるのだとか。
そんなショウの両親。
色々と疑問が生まれてくるが、あの桔梗の魔道をいじる程に力や能力を持っている事を考えれば、母親の方は魔道関係のいい役職に就いているのかもしれない。
父親(?)らしきワイルドイケメンは、おそらくはまだ学生の身であろう。そこを考えれば、どう考えたってショウの年を考えればワイルドイケメンはショウとの血の繋がりはないだろう。
さしづめ、ショウはショウの母親の連れ子に違いない。
そう考えれば、色々と納得できてくる。
ショウの家庭の事情は分からないが、ワイルドイケメンがかなりの金持ちのショウの母親の財産目当てで結婚したのか、ワイルドイケメンが気に入ったショウの母親がお金の力で無理矢理結婚したのか…
分からないが、そんな思惑の入り乱れる想像ができてしまうほど不釣り合いにも程がある夫婦に見えた。
だが、年齢や見た目ばかりに気を取られてる一同の中、一人だけ…
「……複合魔道と錬金術、奇術までも融合させて寸分の狂いもなく、こんなとんでもない陣を創り出すなんて…。しかも、いとも簡単にだ。
…こんな…天地ほどの力の差を見せつけられたら…心が折れてしまいそうになる。」
と、絶望的な表情を浮かべ、桔梗を見ている風雷の姿があった。だが、ショウや桔梗、突然現れた男女から目が離せないみんなは、誰も風雷の変化に気がつく事ができなかった。
「…そんな陣の綻びを修復しながら、桔梗の術の中に入り込んでいけるあの方の力も…。」
風雷はこの4人の力を目の当たりにして、自分の才能と力、実力に対し疑念を抱き、あの4人に比べて自分はなんてちっぽけな存在なのだろう。
今までは、魔道に絶対的な自信を持ち世界一の魔道士になる事を夢見てたし実現できると思っていた。
確かに、桔梗という規格外も居るが自分の努力次第で桔梗を超える事も不可能ではないと信じ、今の今まで血の滲むような努力をしてきたのだ。
だが、こんなとんでもないモノを見せられてしまったら、今までの自分の努力は何だったのかと疑う程に自分と桔梗の力の差の違いに絶望した。
何をどうしたって、一生掛かったって今の桔梗の力にさえ到底及ばない。
……今までの自分の努力は何だったのか?
と、風雷は自分の努力は無駄でしかなかったように思えたし、自分の才能や力も大した事がなかったのだ、今まで自分の魔道という才能に自信を持ち誇りさえ持っていた。
だから、自分の努力次第で誰にも負けない魔道士になれると信じて疑わなかった。だが、今はその全てがガラガラと音を立てて崩れていく。
…自分は今の今まで、自分のちっぽけな才能に恥ずかしくも自信を持ち自惚れていたのだと感じ、ガックリと下を俯き目から希望と夢いう光が消えた。
そして、すっかり自信を失った風雷は音もなく何処かへ消えてしまった。それでも、風雷が居なくなった事さえ、その時は誰も気が付かなかった。
…気がついたのは…
急に現れた二人の男女によって、桔梗の様々な術は解かれ無事ショウと桔梗が救出され
桔梗はワイルドイケメンに思い切りブン殴られメチャクチャ怒鳴られ、ショック状態のショウをショウの母親らしき中年女性が優しく抱きしめ
「大丈夫だよ。もう少し、落ち着いたらゆっくりお話ししようね。」
と、優しく声を掛けてる、直ぐ側で
「…ショウッ!ショウ、嫌いになった?俺の事、嫌になった?……ヤダよ!…お願い、嫌いにならないで?…お願い、お願いだからぁぁ〜〜〜!!!」
ワイルドイケメンに怒鳴られ怒られている桔梗は、ワイルドイケメンの説教なんてそっちのけでショウに縋るように泣きじゃくっている。
だが、何故かショウに触れる事なく一定の距離を保ったまま桔梗はショウを見ている。
収集のつかない状態である。
「…はあ、仕方ない。風雷、俺達を家までワープで移動させてくれ。」
と、ワイルドイケメンは、ドッと疲れたような表情を浮かべると風雷に声を掛けた。
……が。
「……風雷?」
そこで、ようやく風雷がこの場に居ない事に気付いたワイルドイケメン。それに続き、みんなもそれにようやく気がついたのだ。
そして、ワイルドイケメンは少し考える素振りを見せるとハッとした表情をし
「…まずい事になったかもしれない。」
と、呟き
そして、結やフジ達を見ると
「俺の娘と娘の従者がいつも世話になっている。そして、今回このような無様な失態に巻き込んだ事を深くお詫びする。…あと、こんな醜態を曝け出してる状態だから、ショウとバカ桔梗は暫く学校を休むと思う。
至らない娘とクソ生意気な従者だが、今後とも仲良くしてもらえるとありがたい。」
ワイルドイケメンは、泣きじゃくる桔梗を乱雑に俵担ぎしながら深々と頭を下げてきた。それに続き、中年女性もショウを抱き締めヨシヨシと背中をポンポンしながら
「いつも、ショウと桔梗と仲良くしてくれてありがとうね。君達の事はショウからよく話を聞いてるよ。
ショウと桔梗はちょっと、おバカで抜けてる所があるけどこれからもよろしくね。」
結達に向かってにっこりと微笑む中年女性には何か特殊なオーラがあるのか、中年女性を見てるだけでほんわか癒される気持ちになる。
「…あと、風雷の事だが。もしかしたら、しばらく学校を休む事になるかもしれない。
風雷は堅物な挙げ句プライドがクソほど高くて扱いづらいだろうが、根はとても優しい良い子だ。風雷が学校に、来たらいつもと変わらず接してやってほしい。」
と、いつの間にか居なくなってしまった風雷の事でもワイルドイケメンに頭を下げられた。
ワイルドイケメンと風雷が、どんな関係なのかは分からないがとても親密な仲なのであろう事だけは分かった。
「そんなに心配しなくても、ショウちゃんはもちろん。桔梗君と風雷君も大切な友達なんで大丈夫ですよ。」
結は、ワイルドイケメンと中年女性に向かって元気よくニカッと笑って見せた。
「も、もちろんでありますぞ!わたくしなんぞ、ショウちゃんや桔梗君とは幼稚園からの付き合いですし、風雷君ともお友達になれて嬉しいと思っておるので心配無用でござる!」
陽毬も緊張して、カミカミで声がひっくり返ったりしてたが勇気を振り絞って大丈夫だと胸を張って見せた。
その言葉を聞いて、ワイルドイケメンと中年女性…もといショウの両親は柔らかな表情で笑みを浮かべると
「「ありがとう。」」
と、二人は声を揃えて結達にお礼を言った。声が被った事でお互い顔を見合わせてクスクス笑う中年女性と少し恥ずかしそうに苦笑いするワイルドイケメンは、とても仲睦まじく見えて二人を見ている此方まで微笑ましい気持ちになる。
だが、やはり気になる事。
「ショウちゃんのお父様とお母様ですか?」
フジは、そうかな?と、思いつつ。だけど、見た感じがあまりに不釣り合いな二人なので、一応確認をとってみた。
そこの所は、フジ以外のみんなも思う所であった。
みんな中年女性はいいとして、ワイルドイケメンは威風堂々としていて声を掛けるにすら何だか図が高い気がして畏れ多くてなかなか声を掛ける事ができなかったのだ。つまり、ワイルドイケメンが怖く感じたのだ。
そんな彼らに質問できたフジの度胸に結は自分もフジを見習わないとなと感心していた。
すると
「…ああ。これは失礼したな。
俺はショウの父親で、俺の隣に居るのが俺の妻でありショウの母親だ。よく、勘違いされがちだから一応言っておくが、ショウは俺と妻からできた正真正銘血の繋がった俺達の子供だ。」
と、丁寧に教えてくれた。
まさかとは思っていたが、この二人が夫婦だなんてまさかのまさかで驚くしかない。納得できない部分が多くて確信できなかったが、ワイルドイケメンの丁寧な説明によって、この二人がショウの両親だという事が確定した。
そうだろう、そうかもしれないとは思っていたが、本人の口から真実を聞くと確信に変わり、みんなピシャーーーッッ!!?と、雷に打たれたような衝撃を受けてしまった。
みんながショックで固まってる間にも、ワイルドイケメンは
「直接、お前達の口からショウやこのバカの学校生活の事など話を聞きたい所だが…これでも俺は忙しい身でな。簡単な謝罪と礼になってしまった事を詫びる。
では、これからもショウや桔梗、風雷と仲良くしてやってくれると有り難い。」
と、みんなに言い
「……ショウ…どうしよう…嫌われたくないっっっ!!!?…ヤダヤダヤダッッ!!!」
駄々っ子のように癇癪をおこして手につけられない桔梗を小突きながら、ショウの父親がみんなに小さく頭を下げるとショウの両親共々ショウや桔梗まで消えてしまった。
おそらく、ワープ(瞬間移動)という高等魔道を使ったのであろう。
結達は、この現状を理解するまで暫くの間放心状態であった。ハッと我に返ったのは、昼休みを終えるチャイムの音でだった。
「…ウワッ!!?昼休みが終わっちまった!!!急がないと!!」
「…アワワでござる!色々な事が一気に起こり過ぎて、私の頭はパンク寸前ですぞ!!」
「…ショウちゃんと桔梗君、大丈夫かしら?心配だわ…」
「……って、おいっ!!久遠(桔梗)がいなくなったら、俺に掛けられた呪いアイテムは誰が解くんだよ!
」
「あはは!暫くの間、平凡な容姿で過ごせる貴重な体験できて良かったじゃないか!あはは。」
「絶対、よくない!!!うわぁ〜…、どうしよう!最悪にも程があるよ。どうしてくれんだよ!」
などと、それぞれパニックになりながらも、それぞれの教室に戻って行った。
「…これって、桔梗君が魔道に失敗したって事なの?二人は大丈夫なの?」
二人を心配したフジが聞いてきた。
「陣に損傷もなく、上手く回っている所を見ると魔道は大成功している。」
と、見解する風雷の言葉に、ひとまずホッとする面々。しかし
「…だが…」
あまり思わしくない接続詞が、言葉の後に続きみんな心配する気持ちを抱えたまま風雷の言葉を待った。
「……これは、言っていいものか戸惑われるが。
二人の特に、桔梗の精神が崩壊する程までに【桔梗の過去世】はかなり悲惨で酷いものだと容易に予想できる。具体的な内容こそ分かる訳も無いが…。
もし、仮にだ。どちら或いは二人の精神が完全に崩れた場合、あそこにいる二人は木っ端微塵になり跡形もなく消えてしまう可能性が大きい。」
と、予測する風雷にみんな、ゾゾゾ…と身震いしてしまった。だって、時間が経てば経つほど二人のひび割れが酷くなっていくから。
「…ど、どうにかならばいのかい!?」
「そ、そうよ!風雷君は、世界でも数人しかいないS魔道士なんでしょ!?風雷君の力で、あの魔法陣を消して二人を助け出す事はできないの?」
二人の安否に不安を感じた結、フジは、風雷に何かの解決策を求めた。
「残念だが、俺よりレベルや力が弱ければ何とかなっていたかもしれないが。桔梗は、史上最強の魔道士。
この世界で桔梗に敵う魔道士なんて存在しないと言い切れる。だから、どうあがいても発動してしまった最強の陣を俺は解くことも止める事、邪魔する事すらできない。俺達にできるのは、二人の無事を祈るだけだ。」
とても絶望的な事を言ってきた。
結達は、それでも何とかできないのかと風雷に詰め寄ろうとしたのだが、元々白い風雷の肌は白を通り越して色を無くしているように見えた。
「…なんて馬鹿な事を…」
桔梗を見て険しい顔でギュッと握り拳を作り二人の行く末を見ていた。そして、何とかしたいのに何も出来ない策も思いつかない自分が不甲斐ないのだろう。悔しそうにギリギリと歯軋りをしている。
そんな桔梗を見てしまったら、みんな何も言えない。
みんな、黙ってどんどんひび割れの悪化していく二人を誰か助けてくれ!?と、強く祈りながら見ているしかない。
世界でも希少な存在のS級魔道士だという風雷でも桔梗達をどうにもできないと言ってるにも関わらず、頭では分かっていても風雷に縋るしかできず八つ当たりにも似たお願いしかできない。
何もしてられない自分達がとても無力に感じる。
そう感じてる間ににも、二人のひび割れは悪化していき桔梗に関しては大きく割れた部分から小さな破片がボロボロと崩れ下に落下する前にスゥー…と消えていった。
それを見て、二人がボロボロに崩れ落ちた時そのまま消えてしまうんだという風雷の言葉が事実である事が嫌でも分かってしまった。
……ゾゾォ〜〜…
みんなの脳裏に最悪の事態が過ぎった時だった。
「…こういうリスクがあるから、うちのショウの婚約者にしたくなかったんだ。…ったく!」
と、ため息混じりに呆れた声で話す若い男性の声がした。その声に、風雷は驚いたように目を大きく見開き声のする方を向いた。
風雷に釣られ、みんなもそちらを向くと
空中に浮いてる男女の姿があった。
普段なら驚きこれは現実に起きてる事なのかとビビり散らす一同であったが、今日は驚きの連続でしかも今現在非常事態となっており心がいっぱいいっぱい過ぎて、そこを突っ込む心の余裕はここにいる誰にもなかった。
男性の年のころは、高校生か大学生くらいだろうか?
ワイルド系イケメンで、身長は190cmはありそうな高身長に鍛え上げられた体。いかにも強そうで、彼の纏う雰囲気からは知性とカリスマ性を感じ只者ではない感じがヒシヒシと伝わってくるようだ。
男性の横には、ショウのお母さんらしき30代後半くらいの女性が立っている。何故、ショウのお母さんだと思ったかって?
容姿が何処からどう見てもほっそりさせ老けさせたショウなのだ。あまりに、ショウにそっくりなのでショウのお母さんなのでは?と、思っただけなのだが。
ただ、もちろんショウと違う部分も大きくある。
彼女は肌の色や髪の色が真っ白で、左右の目の色が違う。右目が金色、左目が虹色をしていて、黒髪、黒目、一般的な肌の色のショウとは全然違う。
「でもね!桔梗君ほどの完璧人間なんて何処にも居ないと思うよ?ショウちゃんを一番に守れる忠義心とか力なんて桔梗君には誰にも勝てないんじゃなかなぁ?」
「…………。」
「何より、もんのすっごーーーーーーく美人だし!本当、桔梗君に敵うくらいの美人なんて、どこ探しても居ないって思う!!そんな完璧男子が将来、私たちの息子になるって思ったら興奮しないっ!!?」
「……性格以外は完璧、な?だが、その性格が大問題だろ。人を判断する中で一番大切な所だろ?
…はあ…。お前も大概なイケメン好きだからな。」
「…ちょっと、引っかかる言い方してくるなぁ。
確かに私はイケメン大好きだよ?アイドルとか俳優さんとか大好きだし。
リー君だって、大の美人好きの女タラシじゃない!リー君の好みの女の子も知ってるんだからね!高身長で股下が85cm以上長いスタイル抜群のモデル体型のクール系美女!私と初めて会った日の事、まだ覚えてるんだからね!!
『あんたみたいなオバサンに絶対に惹かれる事はないので安心してくれ。容姿から何まで、俺の好みとはかけ離れてる。何よりオバサンだ。圏外もいい所だ。』
って、私を見て鼻で笑ってたもんね!」
「……ッッッ!!?今さら、大昔の事引っ張り出してこなくていいだろ?…だが、あの時は俺がどうにかしてた。猛省してる。」
何やら、喧嘩を始めた年齢からして親子っぽい男女は言い争いながらも、それぞれ
若いイケメンはショウの額に額を合わせ、平凡な容姿のオバサンは桔梗の手に触れている。口喧嘩しながら…
何をしているのか分からないが、さっきまでひび割れていつ壊れてもおかしくない状態だったショウと桔梗のひび割れが修復されていく。
「…あちゃ〜!修復しても新たな傷が出来るからキリがないね!」
と、全身白いオバサンが言うと
「桔梗のクソヤローはどうでもいいがショウが心配だ。面倒くせーが、俺は二人の精神に入って桔梗を完膚なきまでに叩きのめして連れ帰って来る。マナ、頼むぜ?」
ワイルドイケメンは、マナという白いオバサンに向かって笑い掛けると
「オッケー!いつでも大丈夫。ばっち、こーいって感じよ!」
と、ワイルドイケメンに向かってグットのサインをしてできもしないウインクで明るく合図していた。
「さすが、俺の奥さんだ。こんなとんでもない事、簡単にやっちまうんだもんな。ありがとな。」
そんな、ワイルドイケメンの奥さんだという白いオバサンに、ワイルドイケメンはスマートにキスしてオバサンをトキめかして、その様子を見てご満悦な表情を浮かべそこから表情を切り替えキリッと表情を引き締めるとショウの額に額をくっ付け目を瞑って人形のようにう動かなくなってしまった。
いきなりの事に頭が付いていかず、あっけらかんとその様子を見ていたみんなだったが
「…え…?だ、大丈夫なのか?アレ…。そもそも、あの二人は誰なんだ?」
と、疑問を漏らした結の声にみんなハッとし我に返った。
確かに、いきなり正体不明の男女が現れショウと桔梗に触れているのだ。しかも、オバサンの方は桔梗の創り出した魔道だけでないであろう陣全てに一瞬の内に何かを施したようだ。何をしたのかは分からないが。
若いワイルドイケメンはショウの額に額を合わせ動かなくなっってるし。
一体、何がどうなってるやらである。
「…今、かなり多忙な時だってのに。まさか、わざわざこんな所まで出向いてくるなんて…」
と、何やら二人の正体を知っている風な発言をした風雷は驚きその様子を見ていた。
「…え?風雷君、突然現れた二人の正体を知っているの?」
フジが、風雷にそんな質問をすると
「…あ、ああ。詳しくは言えないが、あの二人はショウのご両親だ。」
と、とんでも発言をしてきて、みんな顎が外れるかってくらい口をあんぐりさせて驚いている。
「……は???あのオバサンなら分かるけどさ。
宝来(ショウ)の両親って事は、あの高校生くらいの男も宝来(ショウ)の親って事になるよ?揶揄うのも大概にしてよね。今はふざけていい場合じゃないと思うんだけど。」
蓮は、どう考えてもショウの父親とは思えないワイルドイケメンについて突っ込んだ。
「…年は、かなり離れてるが正真正銘ショウのご両親であり、“今の桔梗”を抑える事の出来る数少ない人物達だ。」
“今の”という言葉に引っ掛かりは感じるものの、あの桔梗を抑え込める力を持つという事は相当な実力と力を持った人達である事には違いない。
しかし、それもそうと…
親子ほど年が離れてるし、あまり言いたくないが二人の容姿が不釣り合いにも程がある。
何故、この二人が結婚したのか…【政略結婚】という文字がみんなの頭の中に浮かび、特に蓮はそれに敏感でブルルっと身震いしてしまった。
ショウのお家は謎でいっぱいだが、一般家庭だというショウの家。だが、とてもお金持ちなのだという。
だから、ショウの身を案じた両親がセキュリティが万全で安全性に長けたお坊ちゃんお嬢様学校に通わせてるのだとか。
そんなショウの両親。
色々と疑問が生まれてくるが、あの桔梗の魔道をいじる程に力や能力を持っている事を考えれば、母親の方は魔道関係のいい役職に就いているのかもしれない。
父親(?)らしきワイルドイケメンは、おそらくはまだ学生の身であろう。そこを考えれば、どう考えたってショウの年を考えればワイルドイケメンはショウとの血の繋がりはないだろう。
さしづめ、ショウはショウの母親の連れ子に違いない。
そう考えれば、色々と納得できてくる。
ショウの家庭の事情は分からないが、ワイルドイケメンがかなりの金持ちのショウの母親の財産目当てで結婚したのか、ワイルドイケメンが気に入ったショウの母親がお金の力で無理矢理結婚したのか…
分からないが、そんな思惑の入り乱れる想像ができてしまうほど不釣り合いにも程がある夫婦に見えた。
だが、年齢や見た目ばかりに気を取られてる一同の中、一人だけ…
「……複合魔道と錬金術、奇術までも融合させて寸分の狂いもなく、こんなとんでもない陣を創り出すなんて…。しかも、いとも簡単にだ。
…こんな…天地ほどの力の差を見せつけられたら…心が折れてしまいそうになる。」
と、絶望的な表情を浮かべ、桔梗を見ている風雷の姿があった。だが、ショウや桔梗、突然現れた男女から目が離せないみんなは、誰も風雷の変化に気がつく事ができなかった。
「…そんな陣の綻びを修復しながら、桔梗の術の中に入り込んでいけるあの方の力も…。」
風雷はこの4人の力を目の当たりにして、自分の才能と力、実力に対し疑念を抱き、あの4人に比べて自分はなんてちっぽけな存在なのだろう。
今までは、魔道に絶対的な自信を持ち世界一の魔道士になる事を夢見てたし実現できると思っていた。
確かに、桔梗という規格外も居るが自分の努力次第で桔梗を超える事も不可能ではないと信じ、今の今まで血の滲むような努力をしてきたのだ。
だが、こんなとんでもないモノを見せられてしまったら、今までの自分の努力は何だったのかと疑う程に自分と桔梗の力の差の違いに絶望した。
何をどうしたって、一生掛かったって今の桔梗の力にさえ到底及ばない。
……今までの自分の努力は何だったのか?
と、風雷は自分の努力は無駄でしかなかったように思えたし、自分の才能や力も大した事がなかったのだ、今まで自分の魔道という才能に自信を持ち誇りさえ持っていた。
だから、自分の努力次第で誰にも負けない魔道士になれると信じて疑わなかった。だが、今はその全てがガラガラと音を立てて崩れていく。
…自分は今の今まで、自分のちっぽけな才能に恥ずかしくも自信を持ち自惚れていたのだと感じ、ガックリと下を俯き目から希望と夢いう光が消えた。
そして、すっかり自信を失った風雷は音もなく何処かへ消えてしまった。それでも、風雷が居なくなった事さえ、その時は誰も気が付かなかった。
…気がついたのは…
急に現れた二人の男女によって、桔梗の様々な術は解かれ無事ショウと桔梗が救出され
桔梗はワイルドイケメンに思い切りブン殴られメチャクチャ怒鳴られ、ショック状態のショウをショウの母親らしき中年女性が優しく抱きしめ
「大丈夫だよ。もう少し、落ち着いたらゆっくりお話ししようね。」
と、優しく声を掛けてる、直ぐ側で
「…ショウッ!ショウ、嫌いになった?俺の事、嫌になった?……ヤダよ!…お願い、嫌いにならないで?…お願い、お願いだからぁぁ〜〜〜!!!」
ワイルドイケメンに怒鳴られ怒られている桔梗は、ワイルドイケメンの説教なんてそっちのけでショウに縋るように泣きじゃくっている。
だが、何故かショウに触れる事なく一定の距離を保ったまま桔梗はショウを見ている。
収集のつかない状態である。
「…はあ、仕方ない。風雷、俺達を家までワープで移動させてくれ。」
と、ワイルドイケメンは、ドッと疲れたような表情を浮かべると風雷に声を掛けた。
……が。
「……風雷?」
そこで、ようやく風雷がこの場に居ない事に気付いたワイルドイケメン。それに続き、みんなもそれにようやく気がついたのだ。
そして、ワイルドイケメンは少し考える素振りを見せるとハッとした表情をし
「…まずい事になったかもしれない。」
と、呟き
そして、結やフジ達を見ると
「俺の娘と娘の従者がいつも世話になっている。そして、今回このような無様な失態に巻き込んだ事を深くお詫びする。…あと、こんな醜態を曝け出してる状態だから、ショウとバカ桔梗は暫く学校を休むと思う。
至らない娘とクソ生意気な従者だが、今後とも仲良くしてもらえるとありがたい。」
ワイルドイケメンは、泣きじゃくる桔梗を乱雑に俵担ぎしながら深々と頭を下げてきた。それに続き、中年女性もショウを抱き締めヨシヨシと背中をポンポンしながら
「いつも、ショウと桔梗と仲良くしてくれてありがとうね。君達の事はショウからよく話を聞いてるよ。
ショウと桔梗はちょっと、おバカで抜けてる所があるけどこれからもよろしくね。」
結達に向かってにっこりと微笑む中年女性には何か特殊なオーラがあるのか、中年女性を見てるだけでほんわか癒される気持ちになる。
「…あと、風雷の事だが。もしかしたら、しばらく学校を休む事になるかもしれない。
風雷は堅物な挙げ句プライドがクソほど高くて扱いづらいだろうが、根はとても優しい良い子だ。風雷が学校に、来たらいつもと変わらず接してやってほしい。」
と、いつの間にか居なくなってしまった風雷の事でもワイルドイケメンに頭を下げられた。
ワイルドイケメンと風雷が、どんな関係なのかは分からないがとても親密な仲なのであろう事だけは分かった。
「そんなに心配しなくても、ショウちゃんはもちろん。桔梗君と風雷君も大切な友達なんで大丈夫ですよ。」
結は、ワイルドイケメンと中年女性に向かって元気よくニカッと笑って見せた。
「も、もちろんでありますぞ!わたくしなんぞ、ショウちゃんや桔梗君とは幼稚園からの付き合いですし、風雷君ともお友達になれて嬉しいと思っておるので心配無用でござる!」
陽毬も緊張して、カミカミで声がひっくり返ったりしてたが勇気を振り絞って大丈夫だと胸を張って見せた。
その言葉を聞いて、ワイルドイケメンと中年女性…もといショウの両親は柔らかな表情で笑みを浮かべると
「「ありがとう。」」
と、二人は声を揃えて結達にお礼を言った。声が被った事でお互い顔を見合わせてクスクス笑う中年女性と少し恥ずかしそうに苦笑いするワイルドイケメンは、とても仲睦まじく見えて二人を見ている此方まで微笑ましい気持ちになる。
だが、やはり気になる事。
「ショウちゃんのお父様とお母様ですか?」
フジは、そうかな?と、思いつつ。だけど、見た感じがあまりに不釣り合いな二人なので、一応確認をとってみた。
そこの所は、フジ以外のみんなも思う所であった。
みんな中年女性はいいとして、ワイルドイケメンは威風堂々としていて声を掛けるにすら何だか図が高い気がして畏れ多くてなかなか声を掛ける事ができなかったのだ。つまり、ワイルドイケメンが怖く感じたのだ。
そんな彼らに質問できたフジの度胸に結は自分もフジを見習わないとなと感心していた。
すると
「…ああ。これは失礼したな。
俺はショウの父親で、俺の隣に居るのが俺の妻でありショウの母親だ。よく、勘違いされがちだから一応言っておくが、ショウは俺と妻からできた正真正銘血の繋がった俺達の子供だ。」
と、丁寧に教えてくれた。
まさかとは思っていたが、この二人が夫婦だなんてまさかのまさかで驚くしかない。納得できない部分が多くて確信できなかったが、ワイルドイケメンの丁寧な説明によって、この二人がショウの両親だという事が確定した。
そうだろう、そうかもしれないとは思っていたが、本人の口から真実を聞くと確信に変わり、みんなピシャーーーッッ!!?と、雷に打たれたような衝撃を受けてしまった。
みんながショックで固まってる間にも、ワイルドイケメンは
「直接、お前達の口からショウやこのバカの学校生活の事など話を聞きたい所だが…これでも俺は忙しい身でな。簡単な謝罪と礼になってしまった事を詫びる。
では、これからもショウや桔梗、風雷と仲良くしてやってくれると有り難い。」
と、みんなに言い
「……ショウ…どうしよう…嫌われたくないっっっ!!!?…ヤダヤダヤダッッ!!!」
駄々っ子のように癇癪をおこして手につけられない桔梗を小突きながら、ショウの父親がみんなに小さく頭を下げるとショウの両親共々ショウや桔梗まで消えてしまった。
おそらく、ワープ(瞬間移動)という高等魔道を使ったのであろう。
結達は、この現状を理解するまで暫くの間放心状態であった。ハッと我に返ったのは、昼休みを終えるチャイムの音でだった。
「…ウワッ!!?昼休みが終わっちまった!!!急がないと!!」
「…アワワでござる!色々な事が一気に起こり過ぎて、私の頭はパンク寸前ですぞ!!」
「…ショウちゃんと桔梗君、大丈夫かしら?心配だわ…」
「……って、おいっ!!久遠(桔梗)がいなくなったら、俺に掛けられた呪いアイテムは誰が解くんだよ!
」
「あはは!暫くの間、平凡な容姿で過ごせる貴重な体験できて良かったじゃないか!あはは。」
「絶対、よくない!!!うわぁ〜…、どうしよう!最悪にも程があるよ。どうしてくれんだよ!」
などと、それぞれパニックになりながらも、それぞれの教室に戻って行った。