美形なら、どんなクズカスでも許されるの?〜いや、本当ムリだから!調子乗んなって話だよ!!〜

ーーーーー


実は、これには深い深ぁぁぁ〜〜〜理由がある。



結達が中学に通い始めて、初日の昼休みの事だった。

ショウと桔梗が、距離感バグバグでとぉ〜っても仲良くしてるのを見て

「…ハア。なーんで、同じ婚約者でもこうも違うかなぁ〜…」

なーんて、同じ婚約者という立場なのに、
ショウの婚約者である桔梗と、自分の婚約者の蓮とは何から何までがあまりに違いすぎて驚きを隠せない。

どうして?と、いう気持ちが溢れてしまい、結はうっかりその言葉を溢してしまったのだ。

声に出してしまっていた事に気がついて、しまった!と、慌てて手で口を隠すが時すでに遅し。

結にも婚約者なる存在がいる事が、バッチリとバレてしまった。

本当にうっかりだった。

ショウと陽毬は、興奮したようにほっぺたをピンク色に染めて興味深々でこっちを見ているし。

フジなんか

「どんな男が結の婚約者なのか、この私が特別に聞いてあげてもいいわ。喜びの涙を流して話すがいいわ。」

何処から目線なのか偉そうに踏ん反りながら、「この私をいつまで待たせる気なの?
早く、話しなさい。どうせ、あなたにお似合いの冴えないブ男なんでしょうけど!(ドヤリ)」と、いう余計な一言のオマケをつけつつの圧が凄い。

……うぐっ!!

これは、もう言い逃れできないやつだと、腹を括った結は、えぇーーーいっ!どうにでもなれっ!と、言わんばかりに勢いに任せて、婚約者の九条 蓮について話した。

もちろん、親同士が勝手に決めた事を踏まえ、当たり障りない程度に話すつもりが

蓮の名前を出しただけで、色々とムカムカ・イライラと腹が立ってきて我慢できず

気がつけば、あの最低最悪な初顔合わせの日について話してしまっていた。そうなったら、もう結の口は止まらなかった。

その出来事が、結の心に大きな刃として深く突き刺さり、消えない嫌な事として大きな傷となり根付いている。

蓮の問題について、何だかんだ理由をつけて自分を誤魔化しても自分だけで抱えるには酷く重すぎて、自分の気持ちを誰かに聞いてほしかった。

その話を聞いたショウとフジ、陽毬は絶句。

桔梗と風雷も、苦虫を噛んだような顔をして結の話に耳を傾けていた。


「九条 蓮は私もよぉ〜く知っているわ!
私の小学校と九条の小学校が近いせいで、朝や放課後に、飽きもせず私を口説きにきてた恥知らずの一人だったから。
色んな男から、口説かれてきりがないから九条も他の男と同じく無視し続けてたんだけど、あまりにしつこ過ぎて顔も名前も覚えてしまったくらいだわ。」


ドーーーンと、カミングアウトする、フジに

…えっ!?あのクズ、フジにもちょっかい出そうとしてたんだ!

結は複雑な気持ちでフジの話を聞いていた。

「あんまり、しつこ過ぎて我慢の限界だった私は、もちろん言ってやったわ。

“あなたみたいなブ男とこの私が、釣り合うとでも思っているの?身の程知らずの恥知らずね。一度、大きな鏡でしっかりと自分の顔を見た方がいいんじゃなくて?”

と、ちゃんと身の程を教えてあげたわ。それから、九条は私の前に現れる事はなくなったけど。」

嫌なものを思い出したわ。なんて風に、フンと鼻を鳴らしていた。


…えぇ〜〜〜っっっ???

九条の事、ブ男って!!?
言っとくけど、九条の顔面偏差値めちゃくちゃ高いからね?
すっごいイケメンなんだけど…う〜ん…。
フジレベルじゃそうなるかぁ〜…。フジから見たら、世の中のほとんどのイケメンは普通レベルなんだね。

…う〜ん…

フジが認めるくらいのイケメンって…一体…???

まさかだけど、桔梗や風雷レベルのイケメンが基準じゃないよな?

いやいや!?普通に考えていないからな?
桔梗、風雷、フジの容姿が異常なだけなんだよ!

と、結は心の中で強く突っ込んでおいた。


「九条は、表裏が激しくて人によって態度を変えるらしいわよ?表向きは品行方正の優等生。
だけど、裏では人を見下したり、子供とは思えない派手な女遊びが激しくて下半身のだらしないクズだと私の親衛隊達が口を酸っぱくして教えてくれたわ。

“九条 蓮には気をつけて下さい”

ってね。
私にとって、九条は目にも入らないどうでもいい存在よ。なのに、心配されるなんて心外だわって親衛隊に言ってやったけど。」

フジの親衛隊は、フジに付き纏っていた蓮を警戒して詳しく調べたのだろう。その親衛隊のおかげで、フジは嫌でも九条 蓮について知る事となったようだ。

ここで、結はようやく蓮のドクズさに現実味が湧いてきたのだった。


ーーーーー


と、いう事があって、この四人だけは九条 蓮が結の婚約者だという事を知っているのだ。

西園寺家と九条家も、まだ二人は学生の身である事からお互いの学校生活に支障が出ないとも限らないという理由から、二人が婚約者である事は時が来るまで公の場では公表しないでおこうという事になっている。

もちろん、ショウと桔梗のように、幼い頃から婚約者がいる子も少なからずいて普通に公表しちゃってるのに。


そして、今現在


「校内中の噂になってるわね。
一年の中で超イケメンだって騒がれてる九条 蓮と、毎年学校のミスコン常連の三年の二階堂 雫が付き合ってるって。
食堂で一緒にご飯を食べたり、デートの目撃情報もあるらしいわ。結がいるのに、本当にクズだわ!婚約者を大事にできないなんて、顔も悪ければ性格も腐ってるわね。」

と、イライラした様にフジは言っていたが、
一応言っておくが、九条 蓮はの誰もが振り向く程のかなりのイケメンだ。フジの美形の基準が異常なだけだ。

「…え?婚約者がいるのに、他に恋人作ってるの!?」

信じられないとばかりに、ショウは目をまんまるくして聞いてきた。

「ショウ。残念だけど、世の中にはどんなクズも存在するんだ。
みんな一人一人違うように、それぞれ考え方も違って当たり前だよ?だから、色んな考え方があって色んな人達がいる。
けど、人道や倫理から外れる様な事は決してしてはいけないよ。もちろん、俺は絶対浮気しないって誓える。
絶対にショウを裏切ったりはしない。俺には、ショウだけだから。だから、そんな不安そうな顔しないで?」

と、桔梗は少し困った様な顔をしつつ、しょうがないなとばかりにショウの瞼、ほっぺ、鼻へと軽くキスして自分より横に広いショウの体を抱き寄せた。

…うわぁ〜…!うわぁぁぁ〜!!

う、羨ましいぃぃ〜〜〜

自分もあんな風に、誰かに愛されてみたい!

…きゅんっ!

と、結はショウ達にドキドキ釘付けになっていた。

しかし、中性的といっても体の成長が遅いであろう桔梗は、容姿もまだまだ未成熟だしそのせいか身長も低い。
声変わりもまだで鈴の鳴るような美声。
それに、ウエーブした黒に近い紺色から紫色、空色へと変化するグラデーションの長い髪をポニーテールにしてるから、桔梗には申し訳ないが何処からどう見ても儚くも美しい超絶美少女にしか見えない。

だから、本人達には言えないが百合カップルがイチャイチャしてるようにしか見えない。


「…痛過ぎるのよ、バカップル。そもそも、あなた達、全然釣り合ってないのよ!
桔梗とショウは、世界にたった一つしかない磨き抜かれた極上の宝石と泥まみれの汚い軽石くらい違うって事理解しているの?
こんなの絶対おかしいわ。本当、見苦しくて見るに堪えない。」

と、小さな声で毒付くフジの声は、おそらく地獄耳の結と桔梗にしか聞こえてないだろう。

桔梗は、一瞬だけゾッとする様な冷たい視線をフジに向けると、直ぐに平然とした様子で変わらずショウと仲睦まじくしていた。

なんだろう?フジは、ショウと幼なじみって言ってたけど何だかギスギスしてるし、ショウに当たりが強い気がする。幼なじみだから、気兼ねがないだけ?

言いづらい事も遠慮なくズバズバ言えるくらいだし。
…けど、度が過ぎてショウや周りを傷つけてる事も多いけど。そこのところは気にしないのかな?

その内、屋上に数名のイケメン達が現れ


「フジ様、お迎えにあがりました。これから、家庭科の授業があるので特別席を用意しております。」

なんて、その中の代表的存在がフジに声を掛け、フジはツンとした態度でそのイケメン達と共に屋上を去って行った。

そして、さっきまでフジが座っていた一人用高級絨毯とフジのお弁当は、フジの取り巻き達とは別の何人かのちょいイケメン達がいそいそと片付けていた。

そういえば、毎日、結達が屋上に入る頃にはフジの席が用意してあった。

食事が終わり教室の移動時間に丁度いい頃合いに、次の授業の準備をしたという報告と共にフジのイケメン達が迎えに来るのだ。

毎回ながら、このよく分からない状況についていけず未だ聞くに聞けずいた、結。


…え?

この人達、また来たの?

と、毎回ながら呆気に取られる結に


「ビックリしちゃうよね。あの人達は、フジちゃんの“親衛隊”なの。」

なんて、ショウがビックリ発言をしてきた。


「…し、親衛隊???」

と、呆気に取られる結に


「今まで、喋るタイミングがなくて言えなかったんだけど。フジちゃん、すっっっごい美人でしょ?
ビックリしちゃうくらい美人だから幼稚園の頃から今もずーーーっと、モテモテなの。」

興奮したように、ショウはフジの説明をして


「他校の人達も、フジさんの噂を聞きつけて見に来てはファンになる人達も大勢おりましたな。登下校の時も出待ちのファンが殺到して、それはそれはアイドルさながらの人気っぷりですな。今現在もそんな感じでありますからな。」

と、ウンザリした顔をしてショウの説明に補足する陽毬。

そういえば、フジがいる間存在が空気かの如く静かだった陽毬。だけど、フジが居なくなった途端にその存在が姿を現してきた。


…ゴクリ…!

風の噂で聞いた事がある気がする。

二次元から飛び出してきたようなもの凄い美人がいて、幼稚園の頃からいつも親衛隊を従えている我が儘な女王様がいるって。

親衛隊やファンも大勢存在してるらしい。

しかも、親衛隊はその中でカーストがあり容姿やスキルなどでその順位は決まり

上位者はフジ直属の取り巻き担当、他はカーストの順位によって役割が違うらしい。

そんな話をうっすら聞いた事があった。

それって、もしかしなくてもフジの事だったんだ!

あの容姿なら納得だわ。

世界が違い過ぎる…


「そうそう!学校の面倒事…。例えば、日直の仕事とか宿題、授業のノート取りやパソコンのデータ編集、家庭科なら裁縫や調理は、全部、親衛隊にやらせて自分は高みの見学ですぞ!」


と、フジが去ってから陽毬は警戒を解いたように、フジと親衛隊について軽い感じに話してきた。

「…うわぁ、別世界…」

本物の女王様みたいやんけ!と、結はビックリしていると、陽毬は更に続けて


「自分は何にもしないし努力も無しに、テストも運動も卒なくこなして上位をキープできちゃうのが悔しい所ですな。
だから、先生方も何も言えないどころか、フジさんの気を引きたくて自らも率先してフジさんを甘やかしてるというのが…もはや、世も末といった感じで幻滅してしまいまする。」

「…えぇ〜〜?努力無しで、上位キープとかポテンシャルが違い過ぎる!す…すごっ!
って、その前に先生方…それは、教育者としてエコ贔屓はマズイんじゃないの?」

と、なんだか知りたくなかった情報に、先生方も人間だもんなぁ。

けど、仕事はしっかりしろよ!

仮にも、人に教える立場の人でしょーが!

と、微妙な気持ちになってしまった。

そして、フジがいないだけで陽毬は気さくに結にも話しかけてくれた。

どうして、陽毬や桔梗、風雷はあんなにもフジを警戒しているんだろう?ショウもフジには、怯えてるように見えるし。


「フジは見下し癖が凄いのです。私やショウの事も馬鹿にして…!だから、私はアイツの事が大嫌いですぞ。私を騙して遊んでるクソヤローと同じくらいにっ!!」

と、カミングアウト&フジの説明する陽毬の言葉の中に違和感。

…“陽毬を騙して遊んでるクソヤロー”?凄く気になるワードが聞こえた気がしたんだけど!

でも、話の流れを崩したくないから、そこのところは後で聞いてみよう。

「…じゃあ、何でフジはショウの幼なじみで今も一緒にいるの?陽毬もショウとは幼稚園からの友達なんだよな?みんなの関係性がいまいち見えてこないんだけど…。」

さすがに、嫌いな相手と一緒にずっと友達でいられる訳がない。けど、陽毬の話を聞いていると何だか腑に落ちない部分がある。

「…フジと俺達の関係って幼馴染みとは違う気がするけど。昔から仲良くはないからね。
幼稚園の頃の話だけど。入園式でフジが俺に一目惚れして告白してきたんだ。速攻で断ったけど。」

桔梗が、苦笑いしながら説明してきた。

…ギョッ!

フジ、幼稚園の時、桔梗君の事が好きだったんだ!
フジ…一目惚れしてその日のうちに告白するなんて行動力あり過ぎだろ!


「だけど、それからが問題でさ。
運悪くも俺達の家とフジの別荘が近いって事もあってさ。フジが、俺達の家に押しかけて俺にアピールしてくる様になったんだよ。
迷惑だから家に来ないでほしいってお願いしたんだけど、彼女は俺の話なんか全然聞いてくれなくて凄く困ってたよ。」

「…あれは、本当にヤババでしたな。
桔梗君しか目に入っておらず、一緒にいる私とショウは存在していないかの如く無視っ!
あまりの自己中さと傲慢さにビビりましたな。…ハハ。
しかも、都合の悪い所はスルーで自分の言いたい事だけ突き通すので、話の通じない宇宙人かと思いましたぞ。…恐ろしや、恐ろしや…」

振られてもめげずに、桔梗君の家に行ってアピール!!?

なんちゅー強メンタルッ!

すっっっげぇ〜〜〜!!

桔梗君のお願いも無視して、自分の我が儘を突き通すなんて…さすが、我が儘女王様。

だけど、桔梗君が言った“俺達の家”って、どういう事だ?

桔梗君には桔梗君の家族が、ショウにはショウの家族が居るはずだよな?

「だけど、俺がショウの婚約者だと知ってフジが嫉妬しちゃったみたいでね。
それから、ショウを目の敵にして当たりが強くなったんだよ。それには、さすがに俺もキレちゃってさ。」

「フジさんのイジメは、アニメに出てくる悪役令嬢の如く酷かったですからな。」


……ん?

話の流れから察するに、幼い頃からショウと桔梗君は一緒に暮らしてる?…んん???

それはひとまず置いといて。

紳士な桔梗君が、キレるとか考えられないけど。
なんか、ちょっとやそっとでは語り尽くせない何かがあったのだけは容易に想像できてしまうなぁ。

…短い付き合いだけど、あんなんだもんなぁ、フジさん。

少しだけ、想像ができてしまう気がするよ。


「それでも、フジは

“絶対、認めないんだから!私より桔梗に見合う女だったら諦めるけど、このゴミ虫(ショウ)なんか絶対の絶対にあり得ないんだから!
ブスだし、頭も悪くて運動神経も悪い!いい所なんて何一つないデブじゃない!
桔梗には、私みたいな美人がお似合いなのっ!!”

って、かなりしつこいし、ショウへの当たりの強さもエスカレートする一方で大変だったよ。」

「…うんうん。そんな事が多々ありましたな。ショウが、あまりに可哀想で見ていられませんでしたぞ。…そして、フジさんが怖くて何もできない自分にも心底ガッカリしましたな…ハハ…情けない。」

と、ガックリ肩を下げる陽毬に

「そんな事ないよ!いつも、陽毬ちゃんが一緒になって悲しんでくれたり慰めてくれて、すごく嬉しかったし元気づけられたんだよ?
いつも、ありがとう。陽毬ちゃん!」

ショウは、語彙力が無いなりに一生懸命に、陽毬に自分の気持ちを身振り手振りで伝えていた。

「…ショウ、こっちこそありがとうですぞ。
いつも、“あのクズヤロー”の事で一緒になって怒ってくれたり悲しんでくれるショウがいるから、何とか耐えられるのであります。」

と、ショウと陽毬は手を取って涙ぐんでいた。

…いいなぁ。分かり合える友達がいるって。と、ほんわかする気持ちと同時に

…うわぁ、壮絶…!ショウが可哀想過ぎるし、桔梗も精神的にかなり参ってただろうなぁ。

…って!そんな恋愛ドロドロな幼少期なんてあってたまるかぁぁ〜〜〜っっっ!!!

幼稚園児はみんな穢れを知らないピュアッピュアな天使って、私のイメージがガタ崩れじゃァァァッッ!!!?

と、心が荒んでしまった。

「そして、小学校に上がった頃。俺に、初めて友達ができた。それが、風雷ね。
全くフジに見向きも関心も持たない俺に冷めたのか、フジは風雷の事が好きになったようだよ?今も追いかけ続けてたなんて驚きだけど。」

「私は小学校は二人と別になりましたが、よく電話やメールなどで話を聞いてましたが、よく話に出てきていた風雷さん!!
中学校に入学して初めて拝見いたしましたが、桔梗と一緒にいても遜色ない、浮世離れした美貌の持ち主ですな。実際に見て、あまりの美貌に腰を抜かしましたぞ!」

へえ。ショウ達と陽毬、小学校は別々だったんだ。
でも、ずっと繋がりがあって友情の深さを感じるなぁ。いいなぁ。

それも、そうとフジ…

…確かに、相手にされない、見向きもされない相手より、別にいい人が見つかれば心変わりしてもおかしくないよな。

そんな事があって、今は風雷君にお熱って訳か。

「フジには、残念だけど風雷には心から愛する女性が居る。だから、

“その女性に勘違いされたくないから近づかないでほしい。”

と、当時の風雷はフジにキツく釘を刺したみたいだけど。」

…フジ、とことんついてないなぁ。

好きになった男の子には、既に心に決めた相手がいるとか。

報われなさすぎて、気の毒だけど。
桔梗君の話を聞いてると、フジって、人の迷惑も考えなくて自分本位過ぎる気がする。


「風雷さんは中学校に入ってから知り合えましたが、風雷さんの好きな人は確かに素敵な女子ですぞ!風雷さんがメロメロになっても、おかしくありませぬ!」

桔梗の話に出てきた風雷の好きな女子。陽毬と面識があるなんてビックリ!

と、結が驚いていると

「私も、“ハナ”だぁ〜〜〜い好き!」

ショウも、楽しそうにコロコロ笑っている。

「確かに、ハナは素晴らしい女性だよね。…女性って思えないくらい漢らしくて逞しいけど。」

なんて、三人の会話から風雷の好きな女子の名前が分かってしまった。
三人が大絶賛するなんて、ハナって女子はどんな人なんだろう?しかも、あの風雷が好きになる人だ。とても、気になる。


「フジに振り回されっぱなしの俺達だったけど、俺も風雷も運良く低学年のうちに大学に合格して飛び級で海外の大学に行くことができた。つまり、しつこいフジから逃げる事ができた。ラッキーだと思ったよ。」

…小学校低学年で、飛び級で海外の大学に入学っすか…頭の次元が違い過ぎて着いていけない。

あれ?桔梗君や風雷君が海外に行ってる間、ショウはどうしてたんだろ?

「まさか、フジと同じ中学校だとは思わなかったけど。あれから、5年くらい離れてたから俺達の事は忘れてると思ってたけど。
また、俺と風雷にアピールして付きまとってきたからウンザリしてる所。」

心からウンザリしてる様子の桔梗。

…フジ、ずっと二人の事が忘れられないでいたのか、成長した二人に久しぶりに会って新たに恋したのか分からないけど。

二人への執着が凄いなぁ。

…あ、そうかぁ。そういうことか!

なんで、このメンバーの中に違和感しかないフジが混じってるのか。

はい、私とショウ、陽毬がお友達になりました。→
ショウの婚約者の桔梗君が、ショウに会いに来ます。→
もちろん、桔梗君の親友である風雷君も桔梗君と一緒です。→
桔梗君と風雷君、どちらかを振り向かせたくて必死なフジが二人にくっ付いてきます。

はい、この奇妙なグループの完成でーす!

って、感じか!なるほど、桔梗君の話を聞いてようやく理解できたよ。


あれ?そういえば…

「桔梗君達は、大学、大学院まで卒業したのに、どうして中学校に入学したの?もう、学校行かなくて良くない?」

と、ごもっともな意見を言う、結に

「ああ。単純に俺がショウと一緒にいたいから。だから、ショウの通う中学校に風雷を誘って入学したよ。」

えーーー!?

そんな理由で、入学決めちゃう?


「それに、年相応の学校生活を送れってショウのお父様からの説得もあってさ。
風雷はショウのイトコな事もあって、風雷もショウのお父様や風雷のお父様にも説得されて高校まで普通に通う約束になったんだよ。」

と、桔梗は丁寧に答えてくれた。


…え?全然、似てる要素が何一つないんだけど、ショウと風雷君っていとこ同士なんだ!

…マジっすか!?

それにしても、年相応の青春を謳歌する為だけの入学とか羨まし過ぎる!


「俺達の話はここまでにして。今は、結の話が大事じゃない?」

なんて、結の事を気遣ってくれる桔梗は紳士的で雰囲気が頼れる大人って感じだ。つい、甘えたくなってしまう。

…いい男は、欠点も無いってか!?

こんな素敵な人が婚約者だなんて、ショウが羨まし過ぎる。フジが、ショウに嫉妬して当たりが強くなってしまう気持ちも分からなくはないよ。

だからって、そんな事はやっちゃいけないけどさ。ショウも、いい子だし。

「結は、このままでいいの?このままだと、親の都合だけで結婚させられると思うけど。」


…ズゴーーーーンッッッ…!!


「…それなんだよな。正直、あのクソカスと初顔合わせの時、迂闊にもアイツを見て一目惚れしちゃったんだよな。見た目と表向きの顔だけはいいからさ。
でも、アイツの本性知って一気に冷めたけどな!だから、アイツと結婚だなんて絶ッッッ対嫌だ。」

「…結ちゃん…」

力いっぱいに蓮を否定した結に、ショウは心配そうに結を見ていた。

「けど、いい婚約者を見つけたって喜んでる両親に、アイツとの婚約を破棄してほしいなんて言いづらいし。アイツの最低最悪な事情もあって、アイツ自身婚約破棄するつもりがさらさら無いらしくてさ。」


「…へ?九条君は、結ちゃんとの婚約嫌だって言ってるんだよね?なのに、どうして九条君は結ちゃんと結婚しようとしてるの?変じゃない?」

と、首を傾げて聞いてくるショウに

「そのクズ…あ、いや、九条は“自分の両親のご機嫌取りの為だけに、結と形だけの結婚するつもりなんだろうね。婚約中だろうが結婚しようが結に関係なく自由に女遊びをしよう”って、思ってそう。噂通りの人物ならの話だけど。」

桔梗が、ドンピシャな大正解を言って説明していた。その内容に、まさかそんな酷い事ができる人間がいるなんてとショウはショックを受けて顔を青くさせていた。

そんな可哀想なショウの頭に、桔梗は自分の頭をコツンと乗せるとショウの頭をヨシヨシしながら何度もショウの頭にキスをして慰めていた。

…いや、慰めてほしいのは、コッチなんだけど…。と、いう言葉をグッと飲み込み、結は未来のドクズな旦那様を思い不快なため息を吐いた。


そして、微妙な雰囲気のまま教室へ戻る為、結達は廊下を歩いていた。すると


…ゲッ!?マジかよ!

こんな時に!タイミング良すぎだろ!?


結は、ゲゲッっと目の前から歩いてくる人物を見て、さっきまで楽しかった気持ちも一気に急降下し不愉快な気持ちになってしまった。
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