美形なら、どんなクズカスでも許されるの?〜いや、本当ムリだから!調子乗んなって話だよ!!〜
「そうですな。鷹司 大樹を知っておりますな?」

と、聞く陽毬に

「ええ、知っているわ。王族で上流階級の中でもトップに君臨するわ。
しかも、王族といってもただの王族じゃない。世界を束ねる帝王の親戚だから同じ王族といっても格が違う王者的存在。
さらに、眉目秀麗、文武両道で完全無欠。
また、社交ダンス界の天才で中学三年生でありながら世界でも注目を浴びる神童。上流階級の人なら知らない人が居ない有名人の一人ですわね。」

そう、フジは説明し答えた。

フジの説明は、その通りでそんな話に疎い結ですら知っている有名人だ。


「何度も姿を見た事もあるし話をする機会も多かったけど、大樹様はギリギリ私にふさわしいと思えるような男だと思うわ。」

ギリギリとついたが、フジも認めるイケメンで血筋もスキルも揃ってるってのは分かる!
社交会とか、なんかの雑誌で取り上げられてたりして見た事あるくらい凄い人みたいだしな。

確かに、鷹司 大樹はそれだけのイケメンだし社交ダンスは本当に圧巻の一言!
一回しか見た事ないけど、鷹司様の社交ダンスはその端麗な容姿から想像できないほど力強くダイナミックさが圧巻だったなぁ。

社交ダンスに興味ない私でさえ、彼の演技に惹き込まれて魅入ってしまったっけ。

あまりの凄さに体中が、グワァーーーーッて熱く込み上げるものがあってドキドキが止まらなかったのを覚えてるよ!

凄かった、感動して演技が終わった後も余韻がなかなか抜けなかったな。

と、数年前に見た鷹司 大樹の社交ダンスを思い出していた。

鷹司 大樹をフジが大絶賛していると影を帯びたようにフ…と陽毬は小さく笑った。

「…ハハ、残念ですな。そんな素晴らしいと評価される男は、実は正体を隠して裏ではクソみたいなクズな遊びをしてましてな。
セフレこそ居ませぬが、その場限りの女性なら数え切れないほど。彼女も頻繁に代わっているのを見るとかなりの女好きなんでしょうな。
頭も切れるので、面倒事を避ける為に上手い事やってるクズですぞ。」

と、言う陽毬に

「何故、あなたにそんな事が分かるのかしら?
彼が手の届かない人物だからって逆恨みするのは良くないわ。彼はそんな事するはずないじゃない。勝手な想像だけで物を言わない事ね!最低だわ。」

フジは、ゴミ虫を見るかのように陽毬の顔を見た。すると

「…陽毬ちゃんは嘘ついてないよっ!」

と、勇気を振り絞って声を出したのだろう。
声を震わせながら内気なショウが陽毬を庇うようにフジに抵抗してきたのである。

「………え?」

まさかのショウの参戦に、フジは驚きを隠せないようで猫に似たつり気味の目を大きく見開きショウを凝視していた。

「大樹君がたくさんの怖そうなお友達と一緒に居るとこ何回も見た事あるよ。それに、見かける度に大樹君の恋人さんが違ってた事も知ってるから。」

と、まさかのショウの証言。

「どうして、ショウがそこまで知ってるの?おかしいわ。」

そう指摘するフジに

「それは、海外での話だからフジは知らなくても仕方ないよ。」

ショウも話に加わった事で、やれやれといった感じに重い腰をあげた桔梗。


「…海外?」

「そう、海外だよ。俺が大学に通ってる間、海外でショウと暮らしてた時の話だよ。
大樹は社交ダンスの遠征や大会、プライベートでよく、俺達の住む地域へ来ていたからね。」

…小学校の時、ショウは桔梗君と一緒に海外に住んでたのかぁ〜。

てっきり、その時期ばかりは離れ離れだったんだと思ってたよ。

と、まさかのショウまで海外に住んでいたという事実に結はおろか、フジまでもが驚きを隠せずいた。


「そこの有名なデートスポットで、俺とショウがデートしてる時によく見かけたよ。
大樹は家族でさえ見破れないくらい完璧な変装をしてたね。けど、残念ながら俺は“M極大魔道士”だからね。人の魔力を見分けるのは容易い。
だから、いくら完璧な変装をしようと俺の目は誤魔化せない。」

と、説明したところで、結は“M極大魔道士”って、何!?

そもそも、桔梗は魔道を使えるの?

…え?

しかも、魔道士に“大”がつくのは何となく分かるけど“極大”???

確か、魔道を使えるのは世界中どこを見渡してもごく一握りしかいない。

しかも、A級〜F級とランクがあって、規格外レベルのS級もあるらしい噂。

魔道使える人なんて見た事なかったし、都市伝説くらいにしか思ってなかったから魔道には詳しくないけど。

魔道を使える人が実在するなんてビックリだよ。しかも、身近に極大魔道士がいるなんて現実味が無さ過ぎる。

と、結は驚き過ぎてお口があんぐりだった。

それにしても…

「…M極大魔道士って?極大もM級も聞いた事ないんだけど。」

思わず、声に出した結に


「“得S級”の更に上、“Master(マスター)級”。
無限にどんな魔道も使いこなし、使えない魔道が無いと評された者にしか与えられないクラス。

“極大”がつくのはこれ以上ない神に等しい力を持つとされる魔道士って事。そんなの桔梗の為だけにあるようなもんだ。」

と、いつの間にか結の部屋に来ていた風雷に、桔梗以外みんなビックリしてそれぞれの悲鳴と共にビクーーーッッッ!!?と、体が飛び上がっていた。

「…い、いつの間に……ッッッ!!?」

あわわわ…と、慌てふためく結達に


「上級魔道ワープ(瞬間移動)だよ。風雷は将来、得S級大魔道士になるだろう天才だからね。上級魔道も軽々使いこなせちゃうんだよ。」

と、冷静に桔梗は説明してきた。

「……M級極大魔道士の桔梗に天才って言われると嫌味にしか聞こえない。ああ、あと玄関までは普通に入れてもらってたんだが言い争う声が聞こえた。だから緊急性を感じて、すまないとは思ったがワープを使わせてもらった。」

風雷は、いきなり部屋に入って来て驚かせてしまった事を侘びつつ今の状況を探っていた。そして、何故か直ぐに

「…ああ、なるほど。」

と、一瞬にして状況を判断し納得したらしい。

…え?なに?

一瞬で、この状況が分かった風なんだけど!

何それ、めちゃくちゃ怖いんだけど!

…なんかのホラーでしかないからぁっ!

結と陽毬は、風雷の全てを悟ったかのような様子にビビりまくっていた。そこに

「桔梗も風雷君も、テレパシー使えるから便利だね。今も、桔梗から説明してもらったんでしょ?」

テレパシーを便利という言葉で片付けてしまうショウにもビックリだが。
次元が違う大魔道士二人に囲まれて育ったショウには普通の光景のなのだろう。

けど、理由が知れて良かった。

知らなかったらビビリ散らして現実逃避するところだったわ!と、結は思ったし、フジや陽毬も似たような事を感じていた。

「…桔梗も風雷も、魔道が使えるだなんて知らなかったわ。しかも、桔梗は極大魔道士、風雷は大魔道士の称号を持ってるだなんて!どうして、今まで教えてくれなかったの?」

驚く事に、ストーカーのごとく桔梗と風雷に詳しいフジが、二人がとんでもない魔道士だという事を今まで知らなかったようだ。

その事実に、結と陽毬も驚いた。

「別に、わざわざ言う必要もないし無闇に魔道を使うものではないからね。
それに大魔道士や極大魔道士だって知られたら、面倒な事に巻き込まれる可能性だってあるから出来るだけ魔道を使わないようにしてるんだよ。だから、俺達が魔道が使えるって事、内緒、ね?」

と、唇に人差し指を当て、シーっと言う桔梗の色っぽさよ。できるなら、顔を覆い隠す大きなマスクの中に隠れている美しいお顔が見たい。

「そもそもの話だけど。生まれて直ぐに赤ん坊に[魔力、魔導属性]を調べなくてはならなく

[無属性]、[魔力有非魔導]、[魔力無魔導属性有]、[魔力魔導属性有]と判別をつけられ国に報告義務が法律で定められている事は誰もが知っている常識。」

確かに、それはこの世界では常識である。

だけど、本当にそんな能力ってあるもんなのかな?そんなの調べる意味あるのかな?

存在しない能力を探し出す為に無駄に予算使ってるのはどうかと思うけど、何故かそんな話題が出てこないのは…まさかとは思うが…?

なんて、声もちらほら聞いた事もあるし結と陽毬もそう感じている。


「だけど、ここからが問題。

[無属性]は、魔力も魔属性も無いから論外として。
[魔力有非魔道、魔力無魔道属性有]は、無属性に近いと判断され保留。

ここで、[魔力魔道属性有]と判断された赤ん坊とその家族はその力が微々たるものだろうが膨大であろうが、国から派遣された人によって

【魔道が使える事は他者に話してはならない。】

と、いった注意とその危険性について説明される。だから、魔道が使えてもみんな使えないフリをしてる。

魔道を使える事を言える時期は成人してから。

或いは、魔道に特化した優秀者が魔道学校へ入学できた者。特例としては、何かかしらの理由で国に認められた天才って感じかな?」


と、桔梗が説明した所で、結と陽毬は驚いてしまった。

能力を持って生まれると、その能力を持っている事を内緒にしなきゃいけない義務があるなんてと。

結と陽毬は魔道の魔の字すらないから、そんな義務があるなんて知らなかった。と、思ったと同時に、もしかしたらこのメンバーの中にも魔道が使える人が居るかもしれないんだと思ったらドキドキしてしまった。

ざっくり見て、桔梗と風雷は別として…フジと蓮あたり何かかしらの魔道を使えそうな気がする。ただの妄想ですがね。

と、結と陽毬が考えていると


「この話を無闇に他の人に話しても、いざとなったら記憶を消すだけだ。脳を操作するから“多少の障害”が出るかもしれないけどな。」

なんて、ゾッとする事を呟いた風雷君の言葉は聞かなかった事にしようと思う結達だった。

“多少の障害”。考えれば、記憶を操作するって事は脳を…そう考えれば馬鹿の私でも分かる。

大魔道士の風雷君でさえ多少なりとも脳に障害が出る可能性のある、とてもリスクのある魔道なんだと。

……ゾゾゾォ〜〜〜

多分、結と似たような事を考えたのだろう。結とフジ、陽毬はサー…と青ざめブルブルっと身震いした。


「ああ、そういえば大樹の話だったな。実は、事情があって俺も大樹の裏の顔を知ってる。…親戚だしな。」

大樹と親戚関係である風雷の言葉もあって、ようやく少しは信じようと思えたフジ。

ここまできたらお察しだろうが、風雷も帝王の親戚なので王族である。

が、風雷はハーフで王族は王族でも他国の王族である。帝王の親戚であると共に他国の王族なので地位は大樹より上である。

訳あって、この国へと国籍を移住している。

「…桔梗と風雷が言うんだったら、少しくらい信じてあげてもいいわ。一体何があって、大樹様と陽毬が知り合ったのかしら?」

と、傲慢な態度でズケズケと聞いてきた。

…えぇ〜〜?

こんな雰囲気悪い感じで聞かれるのでござるか?

な〜んか、嫌だけどフジさんの威圧感が半端ないし怖いから話すけど!

フジさんの態度!ものすっっごくムカついたから、包み隠さずあのクズの正体をバラしてやりましょうとも!

フジさんの理想もガラガラ崩れましょうな。グフ、グフフ…!

と、フジに対して、今がギャフンと言わせるチャンスだ。こんなチャンス二度と回って来ないだろう。
今までの鬱憤を晴らしてやると陽毬は意気込んで、陽毬と大樹の関係について話し始めた。


「上流階級の中でも地位の低いうちの家族は、交流を広めたいが為によくこういった集まりに参加していました。
私は人の集まりが大の苦手。本ッッッ当に嫌で嫌で仕方なかったのですが、家の事情で私も強制参加させられているのです。」

凄く嫌そうな顔をして話す陽毬の気持ちは痛いほどよく分かると結は頷いている。

結は上流階級の集まり事に陽毬の様に頻繁に参加してないが、やはり家の事情で参加せざるを得ない時がありごく稀に参加させられていた。

煌びやかに着飾れた王族をはじめ華族や貴族、大富豪など名だたる著名人達も多く集まる。

会場も地位の高い王族や貴族など富に自信のある者達の屋敷が会場な事が多いし、本物のお城が会場の時もある。
キラキラ煌びやか過ぎて立ちくらみがしそうだと、いつも感じる。

そこで地位が高かったり大活躍したりする人達と交流を持ちたい、深めたい、商売に幅を利かせたいなどと目論み参加する人達も多い。

しかし、こういう場所ではイケメンや美女が俄然、注目を浴びる。そこで、美しい人を見てそれを褒め称え目の保養にする。

そして、気に入った人達と会話したり…まあ、煌びやかで豪華な合コン、お見合いの場でもある。

なので、集まりに参加する人達の目的は様々である。

そんな所に、いくら着飾っても似合わない、人に注目され評価される程の才能やスキルもない人間が行ってみろ。悲惨の一言だ。

美しく着飾って自信のある人達は、いくらオシャレしても残念な結を見て影でヒソヒソ言い、クスクス笑う。なので、必然的にボッチになってしまう。

それを回避する為に、権力や力、美貌ある子息や令嬢達に媚び売って取り巻きになるっていう手はある。

だが、相手に気に入られなかったり、勇気が無くて近づけない。そもそも、私のようにコバンザメが嫌な人は…いわゆる壁の花になってしまう。

悲しいやら虚しいったらありゃしない。壁の花はあまりに惨めで恥ずかしい。

そんな所、誰が好き好んで行くだろうか。

だから、陽毬の気持ちは痛い程分かる。
しかも、陽毬の場合、集まりがある度にほとんど強制参加させられるとか、どんな地獄だとゾッとする。


そんな、ゾッとする世界の出来事を陽毬は語る。

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