名前のない星座


何も知らない、とはいえ、組織の中にうわさというものはどうしても生まれるわけで。

進んで聞いたわけではないけれど、おれたちの中であの指輪は《誰かの形見》という認識でいる。


「藤堂センパイの気狂いストーカー力と真辺センパイの気狂いリサーチ力があってもその誰かは突き止められなかったんだもんねー」

「本当は本人から聞きたいけど、片見かもと思うと聞きづらいよね」


昨日どうだった、という話になり、土いじりをする時でさえ外さないあれについて話すと綾野と百井は眉を下げた。

同性が聞きづらいし言われてないことを聞き出すのはハードルが高く見える。


「ふつうに、恋人います、っていうなら良かったのに、絶対いないもんね」

「うん。男女問わずみんな友達って感じだもんね」


そう言いながら視線を寄越してくるから、女って容赦ない印象なんだよなあ。

おれだって、べつに、好きで友達100人の中にいるわけじゃない。



「いや()ってるからな、おれは」


1年のおわりと、2年の夏と、2年のクリスマスイブ。藤堂さんと競るんじゃね?嫌だけど。


「肝心なことが言えないんじゃね」

「付き合って、ってね」

「いちばんのお気に入りポジを手放すのはこわいもんねー」

「…煽んなよ」


女ってこわい。


わかってるよ、情けないって。中途半端に好きだと言ったって「ありがとう」「わたしもだよ」「かわいいね」と躱される。

あいつだって都合が良いお気に入りを手放したくないんだ。

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