名前のない星座



「もしさ、うわさがほんとうなら、誰のなんだろうね」


昨年卒業した、渋木雨美に一途に構い続けていた学園の王子様も、
今年卒業した、スクープ命で渋木雨美を暴こうとした結果返り討ちにあい信者になった新聞部部長も、

他の誰も、あの星がモチーフの、少しだけ緩い輪の正体がわからないまま。


「昔の恋人、家族、おばあちゃん……魔法つかい説も好きだけど」

「ぎんせーはそれ1番押してるんだよね」

「バカだねぎんせー」


ぐうの音も出ない。

藤堂さんも真辺さんも他のひとも最後はおれに託していったけど、正直自信は無し。

みんなと同じようにあいつに送り出されて、来年の今ごろは何も手にしないまま半端な大学生になってそうだよ。



「みんなおはよー」

「新学期早々遅刻かよ」


とぼけた顔で昼休み前に教室に入ってきたうわさの的。来ないからいろいろ聞かれたじゃねえかよ。


「まるたんには連絡したよ」

「来ないかと思った」


おれには連絡ないし。まあみんなにもないけど。


「ちゃんと来るよ。銀と園芸部の活動しなきゃだもん」


べつに約束した覚えない。


「つぎから、連絡するね。同じクラスになれたもんね」



ああ、本当に、底がない重たい沼だ。


おれが欲しい気持ちは何もくれないのに、欲しい言葉は簡単に言ってくる。

ずるくて、だけど、ゆるしたい。全部。

惚れたほうが負け、では済まされない。
渋木雨美に出会っていなかったら、今のおれは存在していないから。


魔法使いの指輪をしていると言われたほうが、おれにとって都合がいいんだ。


< 14 / 14 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

心配症なカノジョ
花泳/著

総文字数/16,429

恋愛(学園)1ページ

スターツ出版小説投稿サイト合同企画「1話だけ大賞」ベリーズカフェ会場エントリー中
表紙を見る
きみはわたしの地獄
花泳/著

総文字数/22,656

恋愛(その他)33ページ

表紙を見る
よるの数だけ 守ってもらった
花泳/著

総文字数/21,889

その他40ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop