名前のない星座
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にんまり、という効果音が似合う。
目の前でえらそうに立つジャージ姿の女は、青がかった黒目を隠すように瞼を縮めて、コンプレックスでありチャームポイントなんだと聞いてもないのに言ってきた厚めのくちびるはきつく弧を描く。
「きたね!待っていたよ銀河一くん!」
「待たなくてよかったし金田一みたいに呼ぶんじゃねーよ」
どんな理由があろうがなんだろうが、この女は頭がおかしい。高校2年間で何回そう思わせられたかわからない。
だけど、その一番の原因は。
「ついに同じ学年になったね!」
この女が5回目の高校3年生を迎えたことだ。
つまり留年。成績はそこそこ。たぶんやる気を出してないだけ。それがおかしい。出席日数が足りないらしい。これもおかしい。もう退学にするべきだろ。
「なったね、じゃねーよ23才」
「誕生日がまだだから22才だよ。17才のぴよぴよぎんたろーの5個上の美人なおねいさん。算数だよできる?」
「色々余計なんだよババア」
「お・ね・い・さ・ん!」
本当に、なったね、じゃねーんだよ。
なんで5回も3年A組の教室で春を迎えてんだよ。
「しかも同じクラス………地獄かよ」
「えー。わたしはできれば天国にいきたいなあ」
「親泣かせがいけるわけねーわ」
「ねえクラス表ちゃんと見た?ぎんせーもいるし、ももちゃんとあやねるもいるし、タナとチャップリンは離れたけど、担任はまるたんだし、ぜんぜん地獄じゃないよ!」
そういうことを言ってるんじゃなくて。天然ぶった確信犯は今日もイヤミをわかってないフリをする。