名前のない星座
クラス替えなんて慣れているはずなのに桜吹雪のなかではしゃいでる姿は、5つも年上だと思えないけれど。
天然ぶり。無邪気ぶり。わからないふり。知らないふり。気づかないふり。笑ってるふり。ふりが得意なことには気づいている。
ただ、なんでそんなに本心を隠すのかは知らない。
「なんでジャージなの」
「これがわたしの制服なのよ」
「もしかして7年前に買ったやつだから太って着れなくなったの?」
「変わらないし!むしろ痩せたし!そうじゃなくてね、春休みにまるたんに相談して、裏庭の花壇を改造してて汚れたんだよ」
「朝から暴れてんなよ」
丸田はよくこの奇行に7年付き合ってやってるよな。
教師・先生というものとは保育園のころからウマが合わず苦手だったけど、渋木雨美と出会ってからは同情しかない。
「というか銀ちゃんも今日の放課後からやるんだよ」
身勝手、気まぐれ、能天気で破天荒。
ひとりで勝手にしてればいいのに、そんな渦に他人を巻き込もうとしてくる。もう何回巻き込まれたかわからない。
「入り口に花植えて満足したんじゃなかったっけ…」
「またやりたくなったからいっしょにやろ!今度はまっさらで干からびた裏庭を野菜畑にするんだよ!」
「無理。受験もしないで365日をのんびり生きてまた来年もここにいるかもしれないやつの暇つぶしに構ってる余裕ねーし」
「だいじょうぶだよだいじょうぶ!銀ちゃんのお勉強は責任をもってこのわたしが見てあげる。まるたんともお約束済みなのでご安心を」
だったら自分の成績をどうにかしろよ。首席でこの学校に入ったくせになんで留年してんだよ。心配してくれてありがと、と良いようにとられるから言わないけど。