名前のない星座
「あ、ももちゃんもきた!おはよう」
「…なんでジャージなの」
「あのね、裏庭が殺風景だったから今日から、」
「もう私は二度とガーデニングなんてやらないからね。ネイル変えたばっかりだもん」
「ももちゃんのけちんぼ!ネイルならおねいさんであるわたしがやるのに!」
百井だけがおれの気持ちをわかる味方…。
上手い言い訳が出てくるあたりは違うけど。
「うちも今日はムリ〜。カレシとデート」
「あやねる、それはだいじだいじ。まこりんに怒られちゃう。あ、まこりんもいっしょにやるかな?他校生でもだいじょうぶだよ」
大丈夫じゃねーだろ。
「まこは虫ダメだからアテにならないよ。明日は一緒にやるから今日は男たちを連れていきなね」
「あーオレもパス。近いうちは無理かも。演劇部のほうが舞台練習なんだよ」
「チャップリンそれはだいじだね。タナは?」
「俺はバイト。明日はいける」
「それもだいじだね。お金はだいじ」
つまり、この流れは。
みんなの目がこっちを向く。とくに渋木雨美は青が混じったような黒色の目をきらきらと光らせている。まじで勘弁してくれ。
「おれもバイトが…」
「今日はないよ。明日もなくて、明後日はわたしといっしょに働くんだよ」
なぜかバイト先も同じ。縁とかじゃなく、この女が真似をしてきて、今じゃおれを抜かしてバイトリーダーだ。無駄にシゴデキで腹立つ。
「塾の見学が…」
「わたしが無料でお勉強教えるからいらないよ。もう銀色のママとパパとはお約束してるから塾は通わなくてもだいじょうぶだよ。ぎんたのことはわたしが責任と愛を持って青大に入れてみせるからね!」
なんでおれの両親と知らないところで連絡とってんの?青大というのはおれの第一志望大学のこと。ここまでくれば恐怖でしかない。
「じゃあ体調不良なんだよ今日は!」
「ええっ…」
お、やっと黙ったか。