旦那様と恋の駆け引きは、1年契約
2話 交際する想いは6月
◯10年前 幼少期(優依6歳 秀人7歳 君和 12歳)
<回想開始>
君和と秀人が、サッカーボールの蹴り合いをして遊んでいる。
その様子をじっと見つめていた優依、我慢できずに大股開きで二人の元へ。
優依「秀人くんばっかり、君和と遊んでするい!」
怒鳴りつけた優依の主張に、秀人と君和は顔を見合わせて困惑。
優依「君和は、私と結婚するの!私の物なんだから、秀人くんは邪魔しないで!」
秀人「はぁ?邪魔も何もねぇだろ。恋のライバルじゃあるまいし……」
小さな子どもの癇癪にどう反応していいのか分からず、秀人は真面目に取り合おうともしない。
君和は困ったように眉を伏せる。
優依(幼い頃から秀人くんは私にとって、君和との仲を引き裂く悪者だった……)
秀人、サッカーボールを蹴ってリフティング。
優依は君和へ訴えかける。
優依「どうして秀人ばっかり、君和と遊ぶの?仲間はずれにしないでよ!私だって君和と遊びたい!」
秀人「遊びたいんだか、嫁になりたいんだか……どっちかにしろよ……」
呆れ顔の秀人。
見かねた君和は、優依を誘う。
君和「一緒に遊ぼう」
優依「うん!」
優依は笑顔で、君和に抱きついた。
<回想終了>
〇現在・新居(マンションの一室) 朝
夢から目覚めた優依。
ベッドに横たわり天井を見つめる。
優依(君和はいつも私に優しくて、大好きな人だった。私は君和のお嫁さんになるんだって、ずっと信じてきた。なのに……)
優依、目を閉じる。
優依(どうして私の隣には、君和がいないんだろう……)
優依の頬から、一筋の涙が瞳からこぼれ落ちる。
布団がモゾモゾと動く。
優依、何事かと辺りを見渡す。
秀人「優依……」
秀人、布団の中で優依を抱き締める。
秀人「おはようの、キスは……?」
優依「私が秀人くんを好きになるまで、待っててくれるんじゃなかったの?」
秀人「ちぇっ。寝ぼけてなかったか……」
秀人、不満そう。
優依「秀人くん。離れてよ」
秀人「嫌だ」
優依「遅刻するから……!」
秀人「旦那が離してくれなかったせいで遅れましたって、素直に謝ればいいじゃん」
秀人、悪びれる様子もなくサラリと告げる。
優依、抱きしめられた両腕を強引に引き剥す。
優依「私は高校生!結婚したことは高校を卒業するまで、内緒の約束なんだからね!?」
秀人「高校ってめんどくさいな。通わなくてよかった」
優依、秀人から距離を取り、クローゼットを開けて制服を取り出す。
秀人、ベッドから上半身を起こして胡座をかく。
優依(秀人くんは16歳の誕生日からプロのJリーガーとして活動している。つい最近までは、海外でサッカーボールを蹴っていたんだよね)
優依、制服を手に持ちクローゼットを閉める。
優依(U‐16期待の超新星と呼ばれてから3年。今はU‐20のエースとして、日本を拠点に活動している)
U‐20のユニホームに身を包み、ボールを小脇に抱える秀人を想像。
優依(テレビ番組の特集で、年収は1000万あると話題になってたっけ……)
札束の山に埋もれる秀人を想像した優依、目の前で不満そうに優依を見つめていた秀人と目が合う。
優依(秀人くんには、ファンの女の子がいっぱいいるのに……。どうして私なんだろう……)
目が合ったまま、じっと見つめ合う2人。
秀人、にやりと笑う。
秀人「寝起きの俺に、惚れてもいいよ」
優依「誰が!君和の足元にも及ばないんだから!」
秀人「兄貴のどこがいいんだよ。俺は兄貴よりも年収あるし、年も近くてイケメンで、優依を愛してるのに」
優依「う……」
不満そうな秀人。
優依は言葉を詰まらせる。
優依(い、言えないよ……。君和と秀人くんを天秤にかけたら、私以外の女性は秀人くんを選ぶことに気づいているって……)
優依、焦りが隠せない様子。
取り繕う。
優依「ひ、人を好きになる気持ちは、理屈じゃないの!」
秀人「ふーん。俺の方が兄貴よりも優れてるってわかってんのに、兄貴を選ぶんだ。無自覚よりも立ち悪いな」
優依「うるさい!」
秀人、疑いの眼差し。
優依、疑いの目から逃れるように部屋を出ていく。
〇新居 脱衣所
優依(ほんとは、わかってる。君和である必要はないって)
優依、脱衣所で制服に着替える。
優依(君和は私と、結婚したくなかったから逃げた。君和のことは諦めて、秀人くんを好きになる努力をするべきなのに……)
優依、鏡を見つめる。
暗い顔の自分を確認し、蛇口を捻った。
水を出す。
優依(あー、もう!いいや!)
水を両手で掬い、バシャバシャと顔に掛ける。
優依(1年も猶予があるんだもん!これからどうするかを、今すぐ決める必要なんてないよね!?)
自分に言い聞かせた優依、脱衣所から出て行く。
〇新居 玄関先
制服に着替え、リビングで食事を終えた後。秀人に見送られる。
秀人「ランニングがてら、送っていこうか」
優依「結婚がバレたら、退学だって言ったよね!?」
秀人「男と二人きりで歩いているだけで、既婚者だとわかるのか。優依と同じ学校に通う生徒はすごいな」
優依「わかるわけ無いでしょ!?秀人は世界で活躍するJリーガーなんだから、ゴシップはご法度だよね……?」
秀人「俺、芸能人じゃないから。スポーツ選手が極秘結婚してたって、関係ないだろ」
靴を履く優依、床においてあった鞄を手に取り苦笑い。
優依(関係あるよ……!秀人くんは自分が日本を背負うJリーガーとして注目されていること、全然自覚してないんだ……)
腕を組む秀人、なにか言いたげに見える優依をじっと見つめる。
優依(大丈夫かなぁ……。インタビューで結婚してますと口を滑らせて、騒ぎにならなければいいけど……)
優依、視線を反らす。
優依(考えていても、仕方ないか)
秀人に背を向けた優依、玄関ドアに手を掛ける。
優依「行ってきます」
秀人「帰りはまっすぐ、帰ってこいよ」
優依「はーい」
優依、学校に向かう。
〇学校 昼休みの屋上
美智子:優依の友人。姐御肌。黒髪ボブ
美智子「え!?逃げられた!?」
優依「声が大きい!」
優依、美智子へ事情を説明。
美智子は驚愕していたが、納得。
美智子「だから秀人くんが、新郎役だったのね……」
優依「うん……」
美智子「これから、どうするのよ」
優依「……今住んでいる家の契約が切れるまで、同居することになった……」
美智子「契約が切れるまで?いつまでよ?」
優依「1年」
美智子「1年!?」
美智子の声は大声に、優依は呆れ顔。
美智子「秀人くんは、優依が好きなのよね?」
優依「そうみたい」
美智子「1年もお預けってこと?好きな女と暮らして、1年も手を出さずにいられるもんなのかしら……」
優依「知らないよ……」
優依、天を仰ぐ。
優依の心に反して、憎たらしいほどの晴天が広がる。
美智子「まぁ、いいんじゃないの。年も近いし。武田兄弟のうちどちらかを選ぶなら、私は秀人くんを勧めるわ」
優依「君和よりも、秀人くんが優れているのは、認めてるけどさ……」
美智子「けど、何よ」
優依「仕方ないじゃん……私は君和が好きなんだもん……」
優依、泣きそう。
優依(君和を好きになっちゃ、いけなかったの?好きになんて、ならなければよかった……)
優依、君和を好きになり、後悔。
表情が泣き出しそうに歪む。
美智子「6つも離れた男の、どこがいいんだか……」
美智子が理解に苦しむ中、優依は君和のいい所を思い浮かべる。
優依(君和は、優しい。私の光。大好きな人。ずっと一緒に、居て欲しかった。お兄さんみたいな人)
思い浮かべた君和は優依に背を向け、去って行く。
優依(私を置いて行かないで!)
優依の伸ばした手は、空を切る。
前方には背を向け、髪の長い女と遠ざかる君和。
優依(私は君和が好きなのに。秀人くんが、私を捕らえて離さない)
優依の後方からやってきた秀人は歪な笑みを浮かべ、背中から抱きしめる光景を思い浮かべる。
優依(君和の元へ進みたいのに。秀人くnが離してくれない限り、私はこの場に留まるしかない)
秀人を引き剥がそうと藻掻く姿を思い浮かべるが、抵抗も虚しく手足の自由を奪われる。秀人は背後から、優依の首に噛みついた。
優依(私、どうしたらいいんだろう……?)
<回想開始>
君和と秀人が、サッカーボールの蹴り合いをして遊んでいる。
その様子をじっと見つめていた優依、我慢できずに大股開きで二人の元へ。
優依「秀人くんばっかり、君和と遊んでするい!」
怒鳴りつけた優依の主張に、秀人と君和は顔を見合わせて困惑。
優依「君和は、私と結婚するの!私の物なんだから、秀人くんは邪魔しないで!」
秀人「はぁ?邪魔も何もねぇだろ。恋のライバルじゃあるまいし……」
小さな子どもの癇癪にどう反応していいのか分からず、秀人は真面目に取り合おうともしない。
君和は困ったように眉を伏せる。
優依(幼い頃から秀人くんは私にとって、君和との仲を引き裂く悪者だった……)
秀人、サッカーボールを蹴ってリフティング。
優依は君和へ訴えかける。
優依「どうして秀人ばっかり、君和と遊ぶの?仲間はずれにしないでよ!私だって君和と遊びたい!」
秀人「遊びたいんだか、嫁になりたいんだか……どっちかにしろよ……」
呆れ顔の秀人。
見かねた君和は、優依を誘う。
君和「一緒に遊ぼう」
優依「うん!」
優依は笑顔で、君和に抱きついた。
<回想終了>
〇現在・新居(マンションの一室) 朝
夢から目覚めた優依。
ベッドに横たわり天井を見つめる。
優依(君和はいつも私に優しくて、大好きな人だった。私は君和のお嫁さんになるんだって、ずっと信じてきた。なのに……)
優依、目を閉じる。
優依(どうして私の隣には、君和がいないんだろう……)
優依の頬から、一筋の涙が瞳からこぼれ落ちる。
布団がモゾモゾと動く。
優依、何事かと辺りを見渡す。
秀人「優依……」
秀人、布団の中で優依を抱き締める。
秀人「おはようの、キスは……?」
優依「私が秀人くんを好きになるまで、待っててくれるんじゃなかったの?」
秀人「ちぇっ。寝ぼけてなかったか……」
秀人、不満そう。
優依「秀人くん。離れてよ」
秀人「嫌だ」
優依「遅刻するから……!」
秀人「旦那が離してくれなかったせいで遅れましたって、素直に謝ればいいじゃん」
秀人、悪びれる様子もなくサラリと告げる。
優依、抱きしめられた両腕を強引に引き剥す。
優依「私は高校生!結婚したことは高校を卒業するまで、内緒の約束なんだからね!?」
秀人「高校ってめんどくさいな。通わなくてよかった」
優依、秀人から距離を取り、クローゼットを開けて制服を取り出す。
秀人、ベッドから上半身を起こして胡座をかく。
優依(秀人くんは16歳の誕生日からプロのJリーガーとして活動している。つい最近までは、海外でサッカーボールを蹴っていたんだよね)
優依、制服を手に持ちクローゼットを閉める。
優依(U‐16期待の超新星と呼ばれてから3年。今はU‐20のエースとして、日本を拠点に活動している)
U‐20のユニホームに身を包み、ボールを小脇に抱える秀人を想像。
優依(テレビ番組の特集で、年収は1000万あると話題になってたっけ……)
札束の山に埋もれる秀人を想像した優依、目の前で不満そうに優依を見つめていた秀人と目が合う。
優依(秀人くんには、ファンの女の子がいっぱいいるのに……。どうして私なんだろう……)
目が合ったまま、じっと見つめ合う2人。
秀人、にやりと笑う。
秀人「寝起きの俺に、惚れてもいいよ」
優依「誰が!君和の足元にも及ばないんだから!」
秀人「兄貴のどこがいいんだよ。俺は兄貴よりも年収あるし、年も近くてイケメンで、優依を愛してるのに」
優依「う……」
不満そうな秀人。
優依は言葉を詰まらせる。
優依(い、言えないよ……。君和と秀人くんを天秤にかけたら、私以外の女性は秀人くんを選ぶことに気づいているって……)
優依、焦りが隠せない様子。
取り繕う。
優依「ひ、人を好きになる気持ちは、理屈じゃないの!」
秀人「ふーん。俺の方が兄貴よりも優れてるってわかってんのに、兄貴を選ぶんだ。無自覚よりも立ち悪いな」
優依「うるさい!」
秀人、疑いの眼差し。
優依、疑いの目から逃れるように部屋を出ていく。
〇新居 脱衣所
優依(ほんとは、わかってる。君和である必要はないって)
優依、脱衣所で制服に着替える。
優依(君和は私と、結婚したくなかったから逃げた。君和のことは諦めて、秀人くんを好きになる努力をするべきなのに……)
優依、鏡を見つめる。
暗い顔の自分を確認し、蛇口を捻った。
水を出す。
優依(あー、もう!いいや!)
水を両手で掬い、バシャバシャと顔に掛ける。
優依(1年も猶予があるんだもん!これからどうするかを、今すぐ決める必要なんてないよね!?)
自分に言い聞かせた優依、脱衣所から出て行く。
〇新居 玄関先
制服に着替え、リビングで食事を終えた後。秀人に見送られる。
秀人「ランニングがてら、送っていこうか」
優依「結婚がバレたら、退学だって言ったよね!?」
秀人「男と二人きりで歩いているだけで、既婚者だとわかるのか。優依と同じ学校に通う生徒はすごいな」
優依「わかるわけ無いでしょ!?秀人は世界で活躍するJリーガーなんだから、ゴシップはご法度だよね……?」
秀人「俺、芸能人じゃないから。スポーツ選手が極秘結婚してたって、関係ないだろ」
靴を履く優依、床においてあった鞄を手に取り苦笑い。
優依(関係あるよ……!秀人くんは自分が日本を背負うJリーガーとして注目されていること、全然自覚してないんだ……)
腕を組む秀人、なにか言いたげに見える優依をじっと見つめる。
優依(大丈夫かなぁ……。インタビューで結婚してますと口を滑らせて、騒ぎにならなければいいけど……)
優依、視線を反らす。
優依(考えていても、仕方ないか)
秀人に背を向けた優依、玄関ドアに手を掛ける。
優依「行ってきます」
秀人「帰りはまっすぐ、帰ってこいよ」
優依「はーい」
優依、学校に向かう。
〇学校 昼休みの屋上
美智子:優依の友人。姐御肌。黒髪ボブ
美智子「え!?逃げられた!?」
優依「声が大きい!」
優依、美智子へ事情を説明。
美智子は驚愕していたが、納得。
美智子「だから秀人くんが、新郎役だったのね……」
優依「うん……」
美智子「これから、どうするのよ」
優依「……今住んでいる家の契約が切れるまで、同居することになった……」
美智子「契約が切れるまで?いつまでよ?」
優依「1年」
美智子「1年!?」
美智子の声は大声に、優依は呆れ顔。
美智子「秀人くんは、優依が好きなのよね?」
優依「そうみたい」
美智子「1年もお預けってこと?好きな女と暮らして、1年も手を出さずにいられるもんなのかしら……」
優依「知らないよ……」
優依、天を仰ぐ。
優依の心に反して、憎たらしいほどの晴天が広がる。
美智子「まぁ、いいんじゃないの。年も近いし。武田兄弟のうちどちらかを選ぶなら、私は秀人くんを勧めるわ」
優依「君和よりも、秀人くんが優れているのは、認めてるけどさ……」
美智子「けど、何よ」
優依「仕方ないじゃん……私は君和が好きなんだもん……」
優依、泣きそう。
優依(君和を好きになっちゃ、いけなかったの?好きになんて、ならなければよかった……)
優依、君和を好きになり、後悔。
表情が泣き出しそうに歪む。
美智子「6つも離れた男の、どこがいいんだか……」
美智子が理解に苦しむ中、優依は君和のいい所を思い浮かべる。
優依(君和は、優しい。私の光。大好きな人。ずっと一緒に、居て欲しかった。お兄さんみたいな人)
思い浮かべた君和は優依に背を向け、去って行く。
優依(私を置いて行かないで!)
優依の伸ばした手は、空を切る。
前方には背を向け、髪の長い女と遠ざかる君和。
優依(私は君和が好きなのに。秀人くんが、私を捕らえて離さない)
優依の後方からやってきた秀人は歪な笑みを浮かべ、背中から抱きしめる光景を思い浮かべる。
優依(君和の元へ進みたいのに。秀人くnが離してくれない限り、私はこの場に留まるしかない)
秀人を引き剥がそうと藻掻く姿を思い浮かべるが、抵抗も虚しく手足の自由を奪われる。秀人は背後から、優依の首に噛みついた。
優依(私、どうしたらいいんだろう……?)