甘く痺れる恋情~華麗なる御曹司は愛しい運命をもう二度と手放さない~
ずっと、神室のために生きてきた。
そこに不満はなく、神室に尽くすことが俺の使命で人生だと考えていた。


神室を捨てるなんて想像したこともなかったが、俺にとって大切だった神室よりも守りたいものができたのだ。


彼女のいない日々は、つらくて寂しくて虚しくて……。まるで絶望の中で生きているようで、すべてがどうでもよかった。


真白と再会した夜、もう本当にもとに戻れないというのなら、あのまま彼女とふたりで雪に埋もれて死んでもいいと思ったほどに。
神室の本家の血を引く者として生きてきた自分が、生まれて初めて本気で家も肩書きもすべて失ってもいいとすら思った。


真白と神室――どちらかひとつしか持つことができないのなら、俺が選ぶのは人生を捧げてきた神室じゃない。
彼女を失ってまでも守るべきものじゃないと、そう気づいた。


それほどまでに、俺の中で真白はかけがえのない大きな存在だったのだ。
けれど、そんな俺の覚悟を止めたのは、他でもない彼女だった。


俺も、両親も、祖父さえも、真白に救われたのだ。
だから俺は、彼女と生きていくことを条件に、これからも神室に尽くそうと思い直した。
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