モーニングコール~私と課長の微妙な攻防戦~
「君のせいで遅刻しそうだったんだぞ!
した約束は必ず守れ!」
怒り狂っている課長には申し訳ないけれど、彼の端正な顔に銀縁眼鏡はまるで彼のために誂えたんじゃないか、ってくらいよく似合っていた。
その顔が至近距離にあるのだ。
このドキドキはいまの危機的状況にあってのもので、それじゃないとわかっている。
そうじゃないと私はただのドMだ。
それでも。
知らず知らず手が、課長のネクタイを掴んで引き寄せる。
なにが起こっているのか把握できずに間抜けな顔でいる彼の唇に、自分の唇を――重ねた。
「なっ……」
ネクタイから手が離れ、私から離れた課長は現状理解が追いつかずに視線を泳がせていた。
「ガタガタうるさいんですよ。
そんなに言うなら毎日直接、起こして差し上げましょうか?」
「なにを、言って」
まだわけがわかっていない課長にイラついて、もう一度、ネクタイを掴んで引き寄せる。
「課長が好きだって言ってるんですよ」
にやっ、と右頬だけを歪めて笑い、いつもの課長を真似てやる。
「あ、ああ……」
ぼうっとしている課長だが、眼鏡の弦のかかる耳は赤くなっていた。
そんな彼にくすりと笑い、先にデスクに戻ろうとしたものの、言い忘れていたことを思い出して足を止める。
「あ、眼鏡の課長のほうが断然好みなんで、これからはコンタクトをやめて眼鏡にしてください」
【終】
した約束は必ず守れ!」
怒り狂っている課長には申し訳ないけれど、彼の端正な顔に銀縁眼鏡はまるで彼のために誂えたんじゃないか、ってくらいよく似合っていた。
その顔が至近距離にあるのだ。
このドキドキはいまの危機的状況にあってのもので、それじゃないとわかっている。
そうじゃないと私はただのドMだ。
それでも。
知らず知らず手が、課長のネクタイを掴んで引き寄せる。
なにが起こっているのか把握できずに間抜けな顔でいる彼の唇に、自分の唇を――重ねた。
「なっ……」
ネクタイから手が離れ、私から離れた課長は現状理解が追いつかずに視線を泳がせていた。
「ガタガタうるさいんですよ。
そんなに言うなら毎日直接、起こして差し上げましょうか?」
「なにを、言って」
まだわけがわかっていない課長にイラついて、もう一度、ネクタイを掴んで引き寄せる。
「課長が好きだって言ってるんですよ」
にやっ、と右頬だけを歪めて笑い、いつもの課長を真似てやる。
「あ、ああ……」
ぼうっとしている課長だが、眼鏡の弦のかかる耳は赤くなっていた。
そんな彼にくすりと笑い、先にデスクに戻ろうとしたものの、言い忘れていたことを思い出して足を止める。
「あ、眼鏡の課長のほうが断然好みなんで、これからはコンタクトをやめて眼鏡にしてください」
【終】
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