充電したい
カチリ、と課長の手がベルトにかかり、ネクタイから手を離した。

「それは無し。
無しで」

今度は私の方がホールドアップし、彼からそろっと離れる。

「そうか、残念だな。
……充電終わったし、さっさと仕事に戻れ」

戻れって、あなたが引きずり込んだんですよね!?なんて口から出かかったが、かろうじて抑えた。

「……はい。
そうします」

握りしめた拳をぶるぶると震わせながら会議室を出る。

――課長が最近、綺麗になった理由。

それはこうやって、頻繁に私から充電しているからなのだ。



そもそもにおいて、課長と私がこういう関係になったのは、半月ほど前の話だ。

「……疲れた。
もう充電切れる」

時刻は夜の九時を過ぎようとしていた。
部内に残っているのは私と課長のふたりだけになっている。

「すみません、こんな時間まで付き合わせて」

「いや、神代に押しつけて帰った大西(おおうち)が悪い。
好きな、アイドルの出る番組をリアルタイムで観たいからって、どうせ録画してるんだろうに」

「は、はは」

はぁーっ、と課長が呆れたようにため息を落とし、とりあえず笑っておいた。

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