Dr.luce

ルーチェがそう言いながら強い眼差しを向けると、母親は舌打ちをしてジェニファーの体から手を離す。それを見た後、クラルがジェニファーに言った。

「ジェニファーさん、MRIの検査は最低でも十五分はかかります。今のうちにお手洗いを済ませておきましょう」

「ジェニファーさん、こちらの車椅子に座ってください。移動はゆっくりで大丈夫ですよ」

アルオチが素早く車椅子を持ってベッドの傍らにやって来る。ジェニファーはゆっくりと体を起こし、車椅子に座った。その車椅子をアルオチが押し、何かあるといけないのでルーチェも付いて行く。ルーチェの後ろにはジェニファーの両親がいた。

救急科の女性トイレの前で車椅子は止まった。しかし、中に誰かいるのか鍵が掛かっている。

「あれ？誰か使ってるのかな……」

アルオチが困ったように言った刹那、鍵が開いて中から一花が出て来た。そしてトイレの前にいたルーチェたちに、「ごめんなさい！」と驚いた様子で謝り、去って行く。