Dr.luce
父親と母親にルーチェは近付く。クラルと一花も近付いていった。そして、三人は警戒をしながら二人に睨むような目を向ける。

「先生方、どうされたんですか?そんな怖い顔をして」

父親が真っ先に視線に気付き、驚いたような顔をする。一花が素早く白衣のポケットからメモを取り出した。

「……これはどういうことでしょうか?ご説明願います」

それは、一花がジェニファーのためにトイレの蓋に貼っておいたメモ用紙だった。一花の「助けが必要ですか?」という問いにジェニファーが書いたのは、「助けて。誘拐されている」という言葉だった。そのメモを見た刹那、二人の顔は青ざめる。

「クソッ!」

母親ーーー否、女は顔を歪ませながら腰回りに手を回す。その際にチラリと見えたのは銃を入れておくホルスターだった。

(まずい!)

ルーチェがそう思った刹那、一花が誰よりも早く動いた。女の手を掴み、足払いをかけて地面に倒す。女が地面に倒れるのはあっという間で、ルーチェは言葉を失って動けなかった。
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