Dr.luce
もう一人は男性の医師だった。青みがかった黒髪がサラリと揺れ、赤い目は優しげにこちらを見ている。

「この二人が救急科の先生かな?」

「ヨハン先生が言っていた女医さんってあの人のことか?」

「二人とも、静かに!」

ティムとアーサーがヒソヒソと話し、ルーチェは注意する。二人の医師はルーチェたちの前に笑顔で立ち、それぞれ自己紹介を始めた。

「皆さんが研修医の方たちね!私は四月一日一花(わたぬきいちか)。日本出身です。よろしくお願いします」

「僕はクラル・ディスペア。よろしくね。救急科は大変だけどやりがいも大きいから、ぜひうちの科に来てほしいな」

「クラル、気が早すぎるわよ!まだ救急での研修一日目なんだから」

「そうだけど、今言っておかないと後悔するような気がして……」

楽しそうに話す一花とクラルを見ていると、「忙し過ぎて大変」という救急のイメージが崩れてしまう。ルーチェは頭の片隅で、目の下に濃い隈を作り、ヨレヨレな姿の医師が登場すると思っていたのだ。呆気に取られつつ、ルーチェたちも自己紹介をする。
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