カフェオレでも飲みながら。
そしてまた日常は続く
伊織は塾に通っている。
伊織の家はお金持ちなので、中学受験をするかもしれないという。
私は受験をしないので、その話を珍しいものとして聞いていた。
「もうすぐ卒業だね」
教室で、私が言った。
「ほんとにね」
伊織が言った。
「中学で別れるなんて。寂しくなるね」
「うん。家は変わらないけどね」
私はため息をついた。
「別の学校に通うなんて、変な感じ。朝も会わないのかな」
「多分ね」
「寂しいな。ほとんど会えないなんて」
「会えるけど。寂しいって、本当にそう思ってくれる?」
私は照れくさくなって何も言わなかった。
教室には風が吹いていた。
窓が開けてあって、そこから心地よい晴れた外の空気が流れ込んでくるのだ。
伊織が言った。
「朝田さんが僕を好きで、離れたくないって言ってくれたらな。そしたら、受験なんてしないことにするよ」
伊織はまっすぐ私を見て、本当に言ってるよと言ったのだった。
おわり