カフェオレでも飲みながら。
図書室の本
教室で伊織と私が帰り支度をしていると、図工の先生に呼び止められた。
「朝田さん良いところに」
「はい?」
「山内くんも」
「はい」
「これ運ぶの手伝って貰って良いかな?」
これ、とは、と見ると、小さいダンボール箱に本が入っている。
先生の代わりに、本を図書室まで持っていくように言われてしまった。
教室から図書室までは長い。
「朝田さんいい」
本の箱を持とうとすると、鞄を背負った伊織が言った。
「半分持つ」
私が言った。
「いい、女の子に持たせない」
伊織が言った。
私はなんとなく居心地が悪かった。
「やっぱり、持つ」
「いいって言ってる。平気」
伊織が言った。
箱を取り上げると、先を歩いていってしまった。
私は追いかけた。
図書室には誰もいなかった。
ガラガラと戸を開けると本の匂いがした。
カーテンを通して日差しが入って来る。
伊織はダンボール箱を一番前のテーブルに置いた。
椅子を引いて座って箱を開けて、私は本を1冊出してみた。
裏に紹介文。離れ離れになった恋人のストーリー。
「離れ離れになったら、どうする?」
私が聞いた。
「朝田さんと?」
「違うよ、恋人と」
伊織は首を傾げた。
「僕は恋人と離れ離れになるようなヘマはしない。くっついてるよ」
「それでも離れちゃったら?」
私が聞いた。
「それでも離れちゃったら、また追いかけるよ」
「追いかけてまた離れたら?」
「相手を怒ると思うけど、その時は。何で離れるの?」
ページを繰ってみたが、それらしい箇所はすぐには見つからなかった。
「恋人も努力すべきだよね」
伊織が言った。