カフェオレでも飲みながら。
ホワイトデー
日曜日、そういえばその日はホワイトデーだった。
散らかった机で公共施設についてまとめる宿題をしていた私は、清書をしていたら間違えてしまったので、修正ペンを探していた。
買いに行かないといけないかもしれない。
通学路に2つ公園があって、片方の公園からまっすぐ行く道にコンビニがある。
修正ペンは探しても見つからなかったので、上着を着てかばんを持って、私は玄関を出た。
透明なドアを開けてコンビニに入ると見知った顔を見つけた。
真っ黒な髪が目立つ、伊織がコンビニの飲み物のコーナーに居た。
「あ、朝田さん」
店に入ると同時に、伊織が私に気づいて言った。
「偶然。どうしたの?」
「修正ペン買いに来たんだ」
私が言った。
「そっか。僕は昼買いに来た。親留守で。」
伊織はまだ買ってないお弁当を掲げてみせた。
「ここ近くて便利。朝田さんもそう思う?」
「うん」
伊織が言った。
「修正ペンこっちだよ」
棚のペン立てから修正ペンを取ると、一緒に何本かのペンが落ちそうになった。
「昼まだだったら一緒に食べない?何か作ってあげるよ」
伊織がこうやって人懐っこいのに、疑いを覚える自分が居る。
たまに、本当にこれは変な話だが、伊織は私の事を好きなんじゃないかと思う。
だって、普通はそうしない。
「うん」
時々、男子と二人で遊んでいるの自体を自分で不思議に思うが、楽しいのですぐ忘れる。
伊織は性別には拘らないという気が私にはする。(だって、そうじゃないとこうならないから)
そういうものとして回っていて、伊織も特に何も言ってない。
伊織はお昼にラーメンを作った。
お湯を沸かして、ほうれん草をを入れた。
後で人参と一緒に乗せるのだ。
手伝おうとすると、いい、と言われた。
「お客さんは休んでてくれないと。」
私は一緒にキッチンへ入って、伊織がほうれん草を切るのを見ていた。
「よく作るの?」
私が聞いた。
「わりと。一人のとき多いから」
「料理全然したことないよ」
「簡単だよ。食べたければ他にも作ってあげる」
ラーメンは固めに茹でた。
キッチンのテーブルで、二人でどんぶりを囲んだ。
「結構ボリュームあるね」
「一人分だよ」
あつあつを食べ始める。
ラーメンを食べながら、伊織がさらっと言った。
「朝田さんと居るの、好き。親たちは帰ってこなくていい。」
「そう?」
私が聞いた。
「早く食べないと、冷めるよ。」
伊織が言った。
「僕の好きって言う意味、朝田さんには通じないと思うな。朝田さんにはわからないと思うから。」
「恋愛の意味なの?」
私が聞いた。おそるおそる。
「うん。分かる?」
伊織は普通の声で言った。付け加えた。
「でもいいよ。今はまだ気にしなくて。」
気にするよ。
私は思ったが、言っても大変なのでラーメンを食べ続けた。