極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「私にも愛想はよかったけど、芽衣にはすっごく優しく微笑んでるし、芽衣のことが可愛くて仕方がないって感じだったし、好きってオーラが出まくりだったけど。あれに気づかない芽衣って、本当にどうかしてる」


そう言われても、やっぱりあのときの樹くんの態度からは恋愛感情なんて感じられなかった。


彼はもともと優しいし、昔から私や真衣を可愛がってくれていた。


ときにはからかわれることもあったけれど、私にとって樹くんは優しくて頼れる幼なじみのお兄ちゃんで……。
ドキドキしてしまうのは、体の関係を持ったことで意識するようになったり、彼の色気だったり、そういうもののせいだと思っていたのだ。


「だから、私は言ったのよ。『付き合い切れない』って」


あのときの梅の呆れた顔が、脳裏に蘇ってくる。


(第三者から見れば、樹くんの態度はそんなにわかりやすかったんだ……)


彼女の態度に納得した反面、やっぱり幼なじみというフィルターがあった私が気づくのは難しかった気がした。


「とりあえずよかったね。これからはちゃんと言いたいことは伝えた方がいいよ」

「はい。肝に銘じます」


私が苦笑を零すと、梅がふっと噴き出すように笑った――。

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