極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
その後、樹くんはコックピットから姿を消し、程なくしてボーディングブリッジを渡るのが見えた。
ふふっと、笑い声が漏れてしまう。


七月の日差しは強く、今日も暑い。
けれど、もう少しだけここにいたくて、彼の仕事が終わるまで日陰でのんびり待っていようと決めた。


売店で買ったアイスティーを片手に、展望フロアからの景色を眺める。


そういえば、こんな風に飛行機を見たことはなかった。
羽田空港に異動した当初は、展望フロアを始め、空港内のあちこちに足を運んだけれど、最近は最低限の場所しか行かなくなった。


樹くんを待つときも、カフェなんかで時間を潰すことが多かった。今にして思えば、とてももったいないことをしていた気がする。


あんなにかっこいい彼の姿が見られるかもしれないのなら、これから待ち合わせのときには展望フロアで待とう。
密かにそう決めて、ランウェイを見つめる。


夏空の下で離陸していく航空機は、まるで青空に吸い込まれていくようだ。


大きな鉄の塊が空を飛ぶこともすごいけれど、それを操縦できる樹くんはもっとすごいと思う。
勝手に惚れ直してしまい、早く彼に会いたくなった。

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