極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
馬場園さんの表情が歪み、涙をこらえているのがわかる。
パイロット制服を着ているからこそ、普段の凛とした彼女の姿とはかけ離れているように思えた。


「馬場園のことは同僚だとしか思えないし、これからも仕事以上の付き合いをする気は一切ない。それと、これが最初で最後の忠告だ」


淡々と話した彼が、一拍置いてから眉をグッと寄せる。


「今後、もし芽衣を傷つけるようなことをしたら、絶対に許さない」


そして、樹くんは私の肩を抱くと、これ以上ないほどに冷たい声音で言い放った。


「行こう」


馬場園さんはもう言い返す気力もないようで、唇を噛みしめている。私はそんな彼女を横切り、彼とともにエレベーターを待った。


「告白のこと、話してなくてごめん」

「ううん」

「言い訳になるかもしれないけど、電話で話したら余計な心配をかけるかもしれないし、ちゃんと帰ってから話そうと思ってたんだ」

「うん、わかってる。樹くんの言う通り、電話で聞いてたら色々考えてたと思う。それに、あんなにはっきり言ってくれたから、不安もないよ。だから謝らないで」


樹くんはホッとしたように頷き、それからすぐに神妙な面持ちになった。

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