極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
三十分後、私たちはレストランの階下にあるエグゼクティブスイートルームにいた。
そのまま宿泊フロアに移動すると聞いたときには驚いたものの、まだ幸せに浸っていられることが嬉しかった。


明日は樹くんも私も朝は少しゆっくりできるから、仕事には間に合う。
私が「寝坊したら大変だね」と冗談めかすと、彼が「ふたりとも朝は強いし大丈夫だろ」と笑った。


その後、樹くんに誘われて、初めて一緒にお風呂に入ることになった。


深紅のようなバラの花びらを浮かべたバスタブに浸かる私の後ろから、彼が抱きしめてくる。
照れて顔を上げられずにいると、うなじや背中に唇が落とされた。


「樹くん、くすぐったいよ……」

「だって、芽衣が顔を見せてくれないから」

「だからって……ッ、んっ……!」


耳朶にもくちづけられ、反射的に肩が強張る。
樹くんは一向にやめる気配がなく、それどころかうなじや背中をやんわりと食むようにしてきた。

< 136 / 143 >

この作品をシェア

pagetop