極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
エピローグ Side Itsuki
穏やかな春の日差しが降り注ぐ、三月の吉日。
入籍から一年が経った今日、俺と芽衣は家族だけのささやかな結婚式を挙げた。


大きな式ではないが、誰よりも俺たちの幸せを願ってくれていた両親や兄弟に囲まれ、そして互いの気持ちが通じ合った上でこの日を迎えられたことが嬉しい。
ウェディングドレスに身を包む彼女も、幸せそうに笑っていた。


芽衣への想いを自覚してから今日まで、随分と回り道をしてしまったと思う。
ふたりで彼女の家を抜け出したあの夜が、大きな誤解の始まりだった。


酔った勢いで体を重ねたことへの後悔と罪悪感、そして遅れてきた動揺。
わりと動じない性格だと自負していたが、告白をすっ飛ばしてプロポーズをしていしまうほど冷静さを欠いていた。


挙句、芽衣の気を引くのに必死になって……。親から持ち出された見合いに困っていた彼女に、付け込むような真似をした。


平静を装いながらそれらしい理由を並べていた俺は、きっととても滑稽だった。
芽衣を困らせたくなくて本心を言えなかったとはいえ、代替え案があんなものしかなかったなんて……。情けないのはもとより、愚かにも程がある。

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