極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「それは悪かったな」


樹くんとこんな風に話せることが嬉しかった。
子どもの頃は彼と向かい合ってお酒を飲んでいるところなんて想像もできなかったのに、これが現実なのだと思うと心が弾んでしまう。


「そういえば、芽衣は彼氏もいないの?」

「そんな人がいるなら、お見合いなんて勧められないよ」

「芽衣なら男が放っておかないと思うけど。恋愛する気はないのか?」


冗談とも本気ともつかない言葉に、うっかり動揺してしまった。けれど、すぐにお酒の席だと思い直し、できる限り平静を装う。


「する気がないわけじゃないし、結婚願望も普通にあるけど、仕事ばっかりの日々だと恋愛する気力がないっていうか……。気づいたらそういうことから遠ざかってて、なんかもう恋愛の仕方がわからなくなってる感じかも」

「そうか。でも、仕事が楽しいのはいいことだよ」

「うん。ねぇ、樹くんは? さっきも言ってたけど、今は仕事が一番なの?」

「そうだな。パイロットって不規則な勤務形態だし、下手したらろくにデートもできないんだ。それに、今は機長になることが一番の目標だし、結婚はそのあとだと思ってる。でも、付き合うなら相手の気持ちも尊重しなきゃいけないだろ」


樹くんはビールを一口飲むと、私を真っ直ぐ見つめた。

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