極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
ふと、空気が変わる。和気藹々としていた雰囲気が、ほんのわずかに張りつめた。


「でも、結婚したいと思える相手と出会えたら、すぐにでも結婚してもいいって気持ちもあるよ」


一拍置いて笑みを浮かべた彼の表情は、どこか意味深でもあった。
私はどう答えればいいかわからなくなって、「そっか」と微笑を返す。


「樹くんなら、その気になればすぐに相手が見つかると思う。でも、そうじゃなくてもおばさんが理解あるからいいじゃない。うちなんて電話でも小言ばっかりだよ。今日だって実家に着いてすぐに結婚の話を出されちゃって、肩身が狭くて仕方ないよ」

「お互いに大変だな」

「そうだね。でも、私だって真衣みたいに好きな人と結婚したいんだけどなぁ……」


不意に、寂しさが込み上げてくる。
今の生活に不満はないのに、ときどきこんな風に無性に心細くなってしまうのだ。


「って、変なこと言ってごめんね。飲みすぎちゃったかも」


樹くんとの時間が楽しくて、ついいつもよりも飲んでしまった。空気を変えるために慌てて明るく笑ったけれど、彼は黙ったまま私を見ていた。

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