極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
(そう、だよね……)


けれど、樹くんは悪くない。
だって、私たちが体を重ねたのはお互いに合意の上だったのだから……。


「それで、話があるんだ」


次の瞬間、私の唇は思考よりも早く動いていた。


「気にしないでっ……!」


彼よりもずっと大きな声が、ふたりきりの室内に響く。


「大丈夫だよ! 私だってもう大人だし、たった一度体の関係になったくらいで『責任取って』なんて言ったりしないから!」


努めて明るく、せめてこれ以上気まずくならないように。
そんなことを意識して必死に笑顔を作る私に、樹くんが眉をグッと寄せてため息をついた。


なにか間違ってしまったのかと、心に不安が過る。


「芽衣」

「は、はい……」


ところが、反射的に背筋を伸ばして彼を見た私に投げられたのは……。

「結婚してくれ」

まったく予想もしなかった、この状況に似つかわしくない言葉だった。

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