極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
もし……もしも、手順を踏んだ上での行為だったなら、なにかが違っていたのかもしれない。
けれど、恋愛沙汰に無縁な私に反し、樹くんは昔からモテる。今だって、それは変わらないことくらい想像に容易い。
恋愛対象じゃない幼なじみと、付き合ったり結婚したり……。そんなことをしなくても、彼ならいい人に出会えるはず。
綺麗事かもしれないけれど、そう思う。
だから、また胸がチクリと痛んだことには気づかないふりをして、得意の営業スマイルを繕った。
「本当に罪悪感とか責任とか感じなくていいからね?」
「……わかった」
一拍置いて納得してくれたことに、ホッとする。それとは裏腹に、心は鈍色の靄がかかったように重くなった。
(なんで……? これでよかったはずなのに……)
自分の中にある気持ちが、自分自身でもよくわからない。それでも、どうにか明るく努めようと、さらに口角を上げる。
「だったら、とりあえず考えてほしい」
ところが、私が口を開くよりも早く、樹くんが私を真っ直ぐ見つめてきた。
「え? ……考えるって、なにを?」
「俺との結婚」
「は?」
(え? どうしてそうなるの?)
「えっと、だからそれは――」
動揺しながらも言葉を探す私に、彼がにっこりと微笑む。その表情は、なにかを振り切ったようにも見えた。
けれど、恋愛沙汰に無縁な私に反し、樹くんは昔からモテる。今だって、それは変わらないことくらい想像に容易い。
恋愛対象じゃない幼なじみと、付き合ったり結婚したり……。そんなことをしなくても、彼ならいい人に出会えるはず。
綺麗事かもしれないけれど、そう思う。
だから、また胸がチクリと痛んだことには気づかないふりをして、得意の営業スマイルを繕った。
「本当に罪悪感とか責任とか感じなくていいからね?」
「……わかった」
一拍置いて納得してくれたことに、ホッとする。それとは裏腹に、心は鈍色の靄がかかったように重くなった。
(なんで……? これでよかったはずなのに……)
自分の中にある気持ちが、自分自身でもよくわからない。それでも、どうにか明るく努めようと、さらに口角を上げる。
「だったら、とりあえず考えてほしい」
ところが、私が口を開くよりも早く、樹くんが私を真っ直ぐ見つめてきた。
「え? ……考えるって、なにを?」
「俺との結婚」
「は?」
(え? どうしてそうなるの?)
「えっと、だからそれは――」
動揺しながらも言葉を探す私に、彼がにっこりと微笑む。その表情は、なにかを振り切ったようにも見えた。