極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
【異動　大森芽衣　羽田(はねだ)空港店】


「えっ!?　私ですか!?」

「だから言ったでしょ。貴重な戦力が異動だ、って」


店長は、「大森さんがいないと仕事回らないわ」とため息交じりに肩を落とした。
そう言ってもらえて嬉しい反面、今年は異動の可能性が低いと思っていたから驚きを隠せなかった。


「いや、私、今年度に副店長になったばかりですよ。昇進したあとって、最低でも二年は同じ店に配属されたままですよね？」

「そういう風に言われてはいるけど、絶対じゃないわよ。私だって、店長になって一年目でここに異動してきたでしょ」

「それはそうですけど……。私は店長ほど仕事できませんし」


店長は私より一歳年上だけれど、女性スタッフがその年齢で店長に抜擢されたことは過去にもあまり例がない。
世の中に倣って社内では男女平等が謳われているとはいえ、正社員や管理職は男性の方が多いし、女性はあまり若いうちに店長になれないという噂もあるくらいだ。


「なに言ってるのよ。大森さんはうちの主戦力じゃない。あなたがいたから、私は休暇も安心して取れてたの。でもまあ、辞令だしね。今日は事前告知だからメールだけど、数日以内に本社から正式な封書が届くと思うよ」


別に不満はないし、辞令だから仕方がないのもわかる。
ただ、品川店は今まで配属された中でも特に居心地が好かったため、残念な気持ちになった。

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