極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「もしもし」

『あ、芽衣? ちょっと話があるんだけど、もう仕事終わった?」

「うん。もうすぐ家に着くけど」

『あら、そう。あのね、この間のお見合いの話だけど、お父さんの知り合い経由であなたに会ってみたいって言ってくれてる人がいるのよ。ぜひお会いしてみなさい』

「は? いやいや、なに言ってるの? 私、お見合いなんてしないよ!」

『そんな大層なものじゃないわよ。ちょっと会ってご飯食べるだけよ』

(それで済まないかもしれないでしょ! 身内経由の紹介なんて受けたら断りにくいに決まってるし、お母さんのことだから外堀を埋めようとしてくるに違いないもん)


別にお見合いを否定するつもりはないけれど、少なくとも親のお膳立てでセッティングされるなんてことは避けたい。
それなら、婚活パーティーとかマッチングアプリの方がまだいいと思えた。


『とにかく先方にはお願いしておくから』

「ちょっ……! 私、行かないからね!」

『なに言ってるの。せっかくの機会なんだから行きなさい。恋人もいないんだし』

「い、いる!」


完全に逃げ場がなくなりそうだった私は、咄嗟に言葉が口をついて出た。

< 38 / 143 >

この作品をシェア

pagetop