極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない

『え？』

「彼氏、いるよ！」

『えぇっ？　この間会ったときにはそんなこと言ってなかったでしょ！」


こんな嘘が通用する気はしなかったけれど、もう引くに引けない。


「あのときはみんながいたし……。付き合ったのも最近だし……」


後ろめたさから、口調がしどろもどろになる。すぐにボロが出そうで、「とにかく！」と強引に仕切り直した。


「そういうことだから！　ごめん、もう切るね！」

『あっ！　ちょっと、芽衣！』


無理やり通話を終え、次に電話がかかってきても出ないと固く決意する。ただ、その場しのぎの嘘をついた罪悪感は消えなかった。


アパートに着いても母から連絡がなかったのは幸いだったけれど、あの母が簡単に諦めるとは思えない。
どうするべきか頭を抱えていると、再びスマホが鳴った。


芽生えた嫌な予感を余所に、ディスプレイに表示されたのは【樹くん】という名前で……。私は一瞬動揺しながらも、通話ボタンをタップしていた。