極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
樹くんが連れてきてくれたのは、品川区内にあるイタリアンレストランだった。
最初に彼の口から出てきた候補は高級店ばかりだったけれど、緊張で味なんかわからなくなりそうで『普通のお店がいい』とお願いしたのだ。


そんな私のわがままにも、樹くんはさらりと対応してくれた。


店内はそれなりに広くて、すべてのテーブルが半個室になっている。他のお客さんの姿が見えにくいため、私たちのこともあまり見られずに済むだろう。


こんなことを考えてしまうのは、この間も今も彼が周囲の視線を集めているから。
一緒にいると漏れなく私も注目されてしまって、なんだか身の置き場がない。だから、人目を気にせずにいられるのはありがたかった。


それでも、緊張感に包まれていることには変わりなくて、私は運転のために飲めない樹くんに申し訳なさを抱きつつもハイボールを頼ませてもらった。


彼はペリエを飲みながらピザをかじっているけれど、食べている姿ですらかっこよくて、視線をどこに置けばいいのかわからない。

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