極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
（樹くんって職場でも目立ってそう。きっと、制服も似合ってるんだろうし……）


「パイロット制服を着た樹くんって、かっこいいんだろうなぁ」


ぼんやりと考えていたことを声にしてしまったと気づいたときには、樹くんが意表を突かれたようにこちらを見ていた。


「あ、えっと……今のは一般論っていうか……」

「見たい？」


悪戯に緩められた瞳に、鼓動が高鳴ってしまう。動揺を悟られたくなくて、必死に笑みを繕った。


「俺と結婚したら、いつでも見せてあげる」


それなのに、彼が〝結婚〟なんてワードを出してくるものだからたじろいだ。


「っ……。でも、制服って持ち出せるの？」


それでも、なんとか気にしないふりをしてみせる。


「基本的には社内管理だけど、着て帰ることもできるよ。稀に、制服のまま帰るパイロットもいるし」

「そうなんだ」

「それより、〝結婚〟って言葉はスルーする気？」


ところが、樹くんの方は核心から離れるつもりはないみたいだった。


「……本当に本気なの？」

「俺がこんな冗談を言うと思う？」

「思わないから悩んでるんだよ」


ため息交じりに眉を下げる私に、彼がにっこりと笑う。

< 43 / 143 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop