極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「へぇ、ちゃんと悩んでくれてたんだ」


その顔は、なんだかやけに嬉しそう。そんなはずはないと思うのに、心が浮き立ってしまいそうだった。


「芽衣が俺を嫌いじゃないなら、そんなに悪い話じゃないと思うよ? 仕事はもちろん続けて構わないし、もし辞めたとしても芽衣を養う甲斐性と覚悟くらいはある」


けれど、樹くんは浮かれないように努めている私の心をくすぐるように、真っ直ぐな瞳を向けてくる。
それはまるで、普通の恋人たちが未来について語るみたいだった。


「ただ、住む場所だけは合わせてくれるとありがたいかな。もちろん、引っ越しはするつもりだけど、羽田からあまり離れると勤務に影響が出るし」

「引っ越しは必要ないんだけど……」

「でも、芽衣の職場ってこの近くだろ? うちからだと結構通勤時間がかかるよ」


言おうか言うまいか悩んだのは、わずかな時間。だって、話すべきだとしか思えなかったから。


「実は私、この春に異動が決まったの」

「どこ?」

「……羽田空港店」


彼が目を丸くし、程なくしてふっと笑った。

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