極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「まるで、神様に導かれてるみたいだな」


私と似たようなことを考えたらしい樹くんが、「そう思わないか?」と目を眇める。


「同じ職場で働くことになるなら、ハードルがひとつ下がったと考えてみるのも悪くないと思うけど。それに、お見合いはしたくないんだろ?」

「それはもう手遅れかも……」

「手遅れ?」

「さっき、お母さんから電話があって……。お見合いをセッティングされそうなの」

「さすがおばさんだな。たった二週間で話を持ってくるなんて、行動が早すぎる。というか、冗談が冗談じゃなくなったな」

「感心してる場合じゃないよ! 私、咄嗟に『彼氏がいる』なんて言って電話を切っちゃったけど、お母さんが簡単に諦めるとは思えないし……」


肩を落とすと、彼が苦笑を浮かべた。


異動の話が出ただけでも疲れているのに、母に追い打ちをかけられた気分だ。
母なりに心配してくれているのは理解しているものの、素直に受け取れなかった。


親不孝かもしれないけれど、こればかりは譲れない。

< 45 / 143 >

この作品をシェア

pagetop