極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
* * *
翌日は早番だった私が家を出るときには、まだ樹くんは帰ってきていなかった。
家に帰れば会えると思っていたのに、彼はどこかに出掛けていて……。結局、顔を合わせないまま就寝した。
「おはよう、芽衣」
そして、その翌朝。
私が起きると、樹くんはすでにリビングにいた。
「おはよう。早いね」
時刻は七時半。オフでも早起きしているなんて、なんだか彼らしい。
「目が覚めたから起きようと思って。芽衣こそ早いな」
「私もなんだか目が覚めちゃって」
「そっか。ところで、今日ってなにか予定入れてる? 芽衣も休みだったよな?」
「ううん、特には……」
「じゃあ、出掛けないか?」
「え?」
「せっかく休みが重なってるし。それに、結婚してるのにまともにデートもしたことないだろ。もちろん、無理強いはしないけど」
にっこりと微笑まれて、うっかり嬉しくなってしまう。
まさかデートに誘われるなんて思っていなかったけれど、断る理由はなにも思いつかなかった。
「うん、行きたい」
「よし、決まり。芽衣の準備が終わったら出掛けよう。せっかくだから、モーニングも食べに行きたいな。近所に芽衣が好きそうなカフェがあるんだ」
「じゃあ、準備してくるね」
「急がなくていいよ」
一応頷いたものの、私は全速力で身支度を整えた。
ただ、服だけがなかなか決まらなくて困った。
樹くんの好みがわからない上に訊く勇気もなくて、結局は無難に春らしいミモザが描かれたワンピースにした。