極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「ねぇ、チケット代くらいは払わせて。私、樹くんと一緒にいるときにお財布を出したことがないんだけど……」

「そんなこと気にしなくていいよ」

「でも……」

「じゃあ、また朝食を作ってよ。だし巻き卵、すごい好みの味付けだったんだ」


それは、同居を始めた翌日のこと。
たまたま朝食の時間に顔を合わせ、私はだし巻き卵やお味噌汁といった簡単な和食を作り、彼と一緒に食べたのだ。


「それはいいけど、そんなの樹くんの方が損だよ」

「なんで? 芽衣が作る料理の味は芽衣にしか出せないんだから、充分特別感があると思うけど」


さらりとそんな風に言われて、たじろがずにはいられなかった。


「はい、この話はもう終わり。そろそろイルカショーが始まるから行こう」


その上、樹くんに当たり前のように手を繋がれて……。まるで普通の夫婦や恋人のように感じてしまい、ドキドキと早鐘と打つ鼓動を隠すだけで精一杯になっていた。

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