極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「……どう見ても契約結婚とは思えないね。あ、正確には契約結婚ってわけじゃないのか。利害の一致で結婚したんだっけ? それにしては甘い空気だったけど」


これまで当たり障りのない話しかしていなかったのに、樹くんがいなくなったことで気遣う必要がなくなったからか、梅があけすけに言い出した。


「まあ、そんな感じ……。でも、甘い空気とかじゃなくて、樹くんは真面目だからちゃんとした夫でいようとしてくれてるだけだと思う」

「ちゃんとした夫ねぇ……。で、芽衣はどうなの? あんな風に接してこられて、なんともないわけ?」


核心を突かれて、つい言葉を失ってしまう。


「そりゃあ、あんなイケメンとおしゃれなマンションで甘い生活を送ってれば、そうなるよね。ましてや、芽衣の初恋相手なわけだし?」


私がなにも言っていないにもかかわらず、彼女は寸分違わぬ推理力を見せた。


「しかも、芽衣は就職してからまともに恋愛してないわけだし、ハイスペックな幼なじみと一緒に住んでるだけでもときめいちゃいそうだよね~」

「……わかってるよ、バカだって。好きになっちゃいけないってわかってたのに、好きになるなんて。でも、気づいたら手遅れだったっていうか……」

「別に、バカとか思ってないけど」


そう言いながらも、梅の目は呆れたようでもある。

< 83 / 143 >

この作品をシェア

pagetop