極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「呆れてるって、顔に書いてあるよ……」

「まあ、呆れてはいるかな。恋愛の駆け引きとかできない芽衣が、利害の一致だけで結婚するなんて……って。でも、それって結果的にただのきっかけになったでしょ」

「きっかけ?」

「好きになったなら、好きって言えばいいじゃん」

「言えないよ!」


慌てて首を横に振ると、彼女が不思議そうに「なんで?」と首を傾げた。


「だって、二年間は結婚生活を送る約束なんだよ? 告白して振られたら、残りの一年半以上もどうやって一緒に暮らせばいいの? それに、私が告白なんてしたら、樹くんはますます責任を感じるじゃない。言えるわけないよ!」


ただでさえ、彼には責任感を抱かせているのに……。私が素直な気持ちを口にすれば、大きな罪悪感まで持たせてしまうに違いない。


「芽衣って、そんなに鈍感だっけ?」

「え?」


小首を傾げると、梅がローテーブルに頬杖をついていた。眉を寄せた彼女は、さっきよりもずっと呆れているように見える。

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