初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい
私は椅子を引いて、ステファニーを席に座らせる。
その場所は、私の斜め前だ。
(し、しまったぞ。一番近い席に座っているというのに、食堂だと配置が遠いから、『アーン』ができない……!)
私は自分の痛恨のミスに舌打ちしながら、平静を装って自分の席に着く。
しかし、なんだか暑いな。緊張のせいか、体がカッカしてきたぞ。
私はドッドッと音を立てて鳴り止まない心臓を必死で落ち着かせようとしながら、運ばれてくる料理を眺めるふりをしてステファニーをチラチラ垣間見る。
ステファニーは珍しいことに私の方を見ておらず、手元を見たり、救いを求めるようにメイド長達の方を見ていたりしていた。
そんなステファニーに不満を感じた私は、ハッとあることに気がつく。
(思ったことを、ポロリと言う……! 今がまさに、そのチャンスなんじゃないか!?)
こういう時、逆の立場だとステファニーは「わたくし以外を見ちゃいやですわ、ミッチー!」と言いながら私にぎゅうぎゅうしがみついてきていた。
食堂だからしがみつくのは難しいが、ここは頑張るところではなかろうか!