初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい
10 結婚休暇後半:妻を理解する悦び
結婚休暇後半。
私は前半と打って変わって、毎日幸せな日々を過ごしている。
何しろ、ステファニーが同じ家にいるのだ。ただそれだけのことで、世界は虹色に輝くように明るかった。
そして、その悦びを糧に、私は計画の遂行に励んだのである。
その結果は素晴らしい気持ちを私に与えた。
ステファニーが、私の飲み掛けのコーヒーを奪ったり、脱ぎたてのシャツを奪って全力で逃走していた気持ちが今なら分かる。
(ステファニーのコーヒーを飲んだだけで、この幸福感……なんということだ……)
楽しい。
それはもう、模型作りに熱中している時と同じくらい楽しい。
私は自分の妻に夢中で、まさにメロメロキュンキュンであった。
「ステファニー!」
「えっ、何っ……えええ!?」
廊下にいるステファニーを見つけた私は、『今だッ!』という心の掛け声と共にステファニーに向かって全力疾走する。
そしてその勢いのまま、壁際まで逃げていたステファニーの両脇にドゥン! と音を立てながら私は手を突いた。
少し必死感が出てしまったが、まあ許容の範囲だろう。私は髪を振り乱したまま、メガネ越しにステファニーを見つめる。
「あ、あ、愛くるしい私のワイフ、ステファニー。今日も夕食を共にしてくれるだろうか……」
「……!? ……!??」
「壁ドンだ。君のときめきをゲットだ!」
「手に入ったのはトキメキじゃなくてオドロキですわ!! か、壁に……穴が……」
ふむ、言われてみたら二つの大きな凹みが出来ている……。
この後、怒れる老執事とメイド長にコテンパンに説教された私は、壁ドンを全面禁止されてしまった。技を一つ失ってしまったが……私にはまだ秘策があるので大丈夫だ……!
それに、驚くステファニーも、私の行動に対して反応してくれているのだと思うとなんだか愛おしい。
(やはり、これらの行動の先にあるのが、愛……!)