夏空とヴァンパイア
5涙




 昴は呼ぶと男子の一団をすぐ抜けてきた。

 教室の後ろで、晶はとても緊張していた。



「ごめんなさい」



 取っ手の壊れたカメラの入った袋を手渡した晶の声は小さすぎて昴には聞こえなかった。



「え、何?。なんて言った?。これ何?」



 昴が袋の中を見る。



「ごめんなさい」



 晶は出来るだけ大きい声でそう言ってから、走り去った。







 文房具屋は今日も空いていた。 
 琥珀の姿を見つけ、晶は駆け寄った。
 晶は、今日は黒い服を着ていた。



「どうしたの」



 琥珀が聞いた。




「ううん」

「悲しそうな顔してる」




 琥珀はお茶のボトルを晶に渡した。



「僕に起きたことを言わないんだね」



 琥珀が言った。




「……」

「言いたくなったら言いな。無理には聞かない。不安だったら、僕が居る事を忘れないで」







 部屋の勉強机で、日記を開いた晶は、何日か前のページの、端っこの





 昴くん





という小さい文字を、消しゴムで消しながら泣いた。

















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