シャンプー~私と課長のハジメテの夜~
こっちを向いた彼が、にやっといたずらっぽく右の口端だけを上げて笑う。
その顔にさっきのビールがまだ残っているかのようにかっと顔が熱くなった。

「その、……ありがとう、ございます。
嬉しかったです」

真剣に嶋貫課長へあたまを下げる。
私に不利にならないように、そして最大限おじさん社員へダメージを与えてくれた。
きっと私じゃなく、部下だからだろうけど、それでも嬉しくないわけがない。

「あー……」

ちらっとだけ私を見て、彼は顔を膝の間に沈めた。

「そういう可愛いの、他の男の前でやったらダメだからな」

「え?」

かしかしと、彼の空いている左手が後頭部を掻いている。
意味がわからなくて思わず首がかくんと横に倒れた。

「あー、悪い。
ただの独占欲」

「独占欲……ですか?」

ますますわけがわからなくて、身体が斜めになっていく。

「だからー、そんなに可愛いと俺が襲っちゃうよ? ……って話。
あ、いや、これじゃ俺も、あのおっさんのこと言えないな」

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