忘却の天使は溺愛に囚われて


「さっき一瞬がっかりしたろ」
「うっ……噂でセキュリティのすごい豪邸って聞いていたので」
「これはダミーだからな」

 朔夜さんの笑みは大人の色気が漂っていて、胸が高鳴ってしまう。

「え……何ここ」

 そんな中、階段を降りると漫画やテレビでしか見たことがないような、豪華な一室になっていた。
 高そうな絵画や花瓶が並んでいたり、シャンデリアや金の置物まで……まるで本当に豪邸だ。


「お前のために用意したんだ」
「……私、の?」
「カンナは金が好きだったからな」

 お金が好き……⁉︎
 まあもちろん嫌いではないけれど、そんな改めて言われると恥ずかしくなる。
 カンナって一体誰なのだろう。

「じゃあまずは自己紹介からだな。俺は朔夜、歳は19」
「じゅ、じゅうきゅ……⁉︎ もっと年上かと思ってました」

「よく言われる」
「それで無法地帯の中で一番強いんですか?」

「まあ一応。じゃあ次はお前」
「あ、はい! 私は花咲乙葉、18歳の高校三年です!」

「昔はここに住んでいたのか?」
「はい! 今は地元を離れているんですけど、高校一年の冬頃までこっちで過ごしていました」
「……俺がカンナと連絡がつかなくなった時期と一致するな」
「え……じゃあ、本当に私がカンナさん? なんですか……?」
「俺が聞きてえぐらいだ」
「難しい問題ですね……」

 うーん、と考えてけれど、もちろん答えなど出るはずもなく。
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