忘却の天使は溺愛に囚われて
「しっかり眠れました! お気遣いありがとうございます」
「それならよかった。腹は空いているか?」
「い、いえ! 今日はどこか予定があるんですか? 私も友達と出かけ……きゃっ⁉︎」
お腹が空いていると言ってしまえば用意してくれるのかもしれないけれど、そこまでお世話になるわけにはいかないと思い、やんわり拒否した。
それで折れてくれないのが朔夜さんのようで、何故かお姫様抱っこされる。
「え、あの朔夜さん……⁉︎」
「なんだ」
さも当然のように抱き上げられ、昨日案内されたリビングに連れていかれる。
そこには朝ごはんが用意されていて、テーブルの前に座らされた。
「遠慮せずに食べろ。ここはもうお前の家でもあるんだから」
「……うっ」
「何か不満か?」
「不満ですよ。早速昨日決めた条件フル無視じゃないですか」
無法地帯の支配者に対してこんな口の利き方は良くないとわかっているけれど、思わず突っ込まずにはいられない。