忘却の天使は溺愛に囚われて
3.深まる謎
その日の夜、私は夢をみた。
『どうした? 今日は珍しく甘えてくるんだな』
『……うん』
顔は誰かわからないけれど、この声を私は知っている。
けれど、私が普段聞いているものよりさらに優しさ、愛おしさの含む声をしていた。
いったい誰に向けた言葉なんだろう。
ねえ教えて、朔夜さん──
「……う、ん」
夢はそこで途切れ、私は目を覚ました。
なぜか視界が歪んできて、その時初めて私は泣いているのだと理解した。
「また私、泣いてる……」
昨日もそうだった。
別に何か悲しいことがあったわけでもないのに、気づけば泣いているのだ。
「乙葉、どうかしたのか?」
涙を拭っていると、夢で聞いた声がした。
パッと顔をあげると、すでに起きていた朔夜さんが私を見るなり目を見張る。
「なんで泣いて……」
「お、はようございます! 少し怖い夢をみていたみたいで……」
慌てて笑顔を浮かべ、勢いよくベッドから下りた。
昨日に続き今日も泣いているところを見られ、少し恥ずかしい。