忘却の天使は溺愛に囚われて
「いやあ、何でもそこのトップに立つ男がね、すっごく顔が良いらしくて」
いったいユキはどこからその情報を仕入れてくるのだろう。
目を輝かせながら話している。
「危険な男ってすっごく惹かれない?」
「そんな軽い気持ちで無法地帯に行こうとしたらダメだからね」
「わかってるけど、一度だけでも見てみたいなって」
無法地帯の男に興味を示すユキに、私は危ないからダメだと何度も言い聞かせる。
それ以上この話をすることはなく、私たちは他の友達とも合流して遅くまで遊んでいた。
「じゃあね乙葉、また明日!」
「うん、またね」
夜になると私たちは解散し、帰路につく。
私はというとホテルを予約していて、そこに泊まる予定だ。
楽しかったなあと今日一日を振り返りながら歩いていると、私の横を通り過ぎた車が不自然に止まる。
何かトラブルでもあったのかと思っていると、車から降りてきた男が……私を見た。