忘却の天使は溺愛に囚われて
4.自分らしさ
翌朝。
私はいつもより早く目が覚めた。
いつも先に起きていた朔夜さんは、今日はまだ眠っていて、彼の綺麗な寝顔はずっと見ていられそうだ。
普段は私と一歳差とは思えない大人の男性らしく、危険な色気も漂わせているけれど、寝ている姿は年相応で、少し幼さすらも感じられた。
「……ふふ、かわいい」
思わず頬をつんつんしたくなったけれど、起こしたら悪いなと我慢する。
「そうだ」
いつも朔夜さんが色々してくれているから、今日は私が全部しよう。
まずはキッチンを借りて朝ごはんの準備から始めた。
普段から料理をよくするため、得意な方だ。
せっかくだから朔夜さんに喜んで欲しいなと思い、手の込んだものを作っていると……ガタッと、近くで大きな物音がして顔をあげる。
そこには服や髪が寝起きで乱れたまま、焦ったように私を見つめる朔夜さんの姿があった。
貴重な寝起きの朔夜さん……!
完璧なイメージが強かったため、少し乱れている姿は新鮮で、思わずキュンとしてしまう。