ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
この愛を一歩、一歩/その8
アキラ



建田さんとこの残党が抜けた…

それを広域組織が受け皿となったら…

俺みたいな素人でもその先は想像が付くさ


...


「追川さん、とにかく正確な情報をお願いします。わかり次第連絡ください」

ここでオレは電話を切った


...



「アキラ…」

気が付くと、話の主から解放された電話器に視線を浴びせたままのオレの横で、ケイコちゃんが心配そうに左腕を掴んでいた

肘のあたりをぎゅっと

その愛おしい手の平からは、やや汗ばんでる感触が伝わってきた

それだけで、彼女の心の動揺が推し量れたよ


...



「ケイコちゃん、そのまま言うよ。いい?」

「いいよ。もう、何でも包み隠さずでだよ、私たち。言って!」

「まだはっきりしていないが、相和会から離脱者が出たらしいんだ。建田さんとこにいた連中が数人ってことだよ。そいつら、関西か関東かどっちか知らんが、魂を売って看板を買った…、そんなもんだろう」

「それ、どういうことになるの、ねえ…、アキラ!」

「建田さんの組なら、マッドハウスの内部事情は把握してるよ。例のクスリ、あそこじゃ”流通”してないとね…。俺達の証言は偽証だって見抜いている人間が、相和会と向き合ってる全国組織に寝返れば、どういうことになるか…」

高校2年生のケイコちゃんに、こんなことはっきり言っていいのかよ、オレ!

言葉を吐いた瞬間、とてつもなく後悔した

ケイコちゃん…


...



オレの腕に優しくすがっていた彼女は、その掴んでいたものを力いっぱい、自分の体の中へ引き寄せた

「怖い、アキラ…、怖いよ…」

彼女をこんなに怖がらせてしまった

「オレも怖い。だけど一緒だ。よく考えよう、冷静になって…」

この後、二人は真正面から抱き合ったまま、膝を崩し、無言で固まっていた





< 100 / 224 >

この作品をシェア

pagetop