ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
この愛を一歩、一歩/その10
追川




一方で、広域組織側も怠りはなかった

この機を、しっかりと注視していたんだ

矢島と建田の対立の構図は、万人周知のことだったしな

その上で、建田の旧勢力を引っこ抜いた訳か…

従来なら、間違いなくここで流血の抗争が勃発となる

相和会発足以来、武闘派集団の先頭に立っていた矢島だ

離脱した連中には、生まれてきたことを後悔するほどの酷い手口で、”処置”を躊躇わない

即、手を下したはずだ


...



ところが、今は事情が違う

東西の広域組織、相和会ともに、お互い中長期でのメリットにかなった新たなルールを敷くには、相馬豹一が逝去したこの時期以外にはないという共通認識を持っているはずさ

そうであれば、コトは一気に単純となる

今起こっていることは、けん制球にほかならない

そして、それはそのまま両者間の抑止力となっている

従って、組織としての抗争は起きないし、奴らにはハナからその気もない

しかし、新たなルールができれば、そのルールのもとで、しかるべきケリはつけるつもりかもな

相馬豹一をきれいさっぱりリセットできたら、連中はある意味”タガが外れる

奴らがどこで落ち着こうが、それ以降が恐いということだ

そうなれば、逆に、新しいルール内でなら思う存分ということで、凄惨さはむしろ増すだろう


...



そこで、考えるんだ…

香月らの身に災禍が及ぶかどうかを

濁流に飲み込まれ込まれながらも、香月アキラと横田競子は必死で愛を育んできたんだ

そんな健気な二人を、これ以上、奴らの淀んだ思惑の犠牲にはさせてはならない

それには、奴らのこれからのシュミレーションを先読みしないと…

だが、如何せん、情報が足りない

やはり奴らが、”それぞれ”これから”どこ”へ向かう気なのか、それを掴まないことには”見えて”こないな

よし、こうなったら、”あの”ルートで動いてみるか…





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